最終章 戦国時代の終焉
第267話 戦国時代、どうケリをつけましょうか?
- 1541年(天文10年)8月 -
- 京 山城(京都南部) 施薬不動院 -
東北が落ち着いたので、俺は京に戻ってきていた。主に公卿への挨拶まわりと越後(新潟本州部分)の米である越光とジャガイモの蒸留酒である「
「やれ。一仕事終えた」
「お疲れさん」
部屋に戻ってきたのを出迎えたのは、お忍びでやってきた武田氏家臣で前世?からの友人でもある小山田虎親である。
毛利氏と武田氏の事で話しあいたいことがあると言うことで、
施薬不動院は京でも有数な観光地になっていたから、多少不審者が出入りしても疑う人間はいないのだ。
「早速だが・・・」
小山田虎親は相談したいことを話し出す。何でも現在、武田氏の家臣団の意見は真っ二つに割れているらしい。
元就さまの鎮西大将軍の就任で、武田氏が毛利氏に従属することで意見は一致しているが、無条件で降伏するか一度ぐらいは戦って意地を見せるかで意見が別れているそうだ。
「どうすればいいと思う?」
小山田虎親が上目遣いに俺を見る。
「あなたはどっち派なのですか?」
「どっち派もなにも、既に歩兵銃と大砲まで持っている毛利に、未だ火縄銃にも至ってない武田が敵うわけないだろ。長篠の戦いの再現をやれとでもいうのか?」
小山田虎親はジト目で俺を見る。
「でしょうね。でも、意地の一戦を選んだ場合は破滅しかないですよ?」
そう。戦うことなく武田氏が降伏しないのなら、毛利氏に武田氏の降伏を受け入れるメリットはない。後腐れなく滅ぼした方が良い。
尤も、あの時戦っていればワンチャンあったかもしれないという思いは意外と残る。史実での毛利氏は、関ヶ原の戦いで総大将として担ぎ出されながらも禄な働きも出来ずに敗北。
領地も大幅に減らされた無念を忘れないためにも、昭和の時代まで毎年正月の挨拶で、「今年は倒幕に動くか?」「いや時期尚早じゃ」というコントを当主と家臣との間でやっていたという逸話があったりするので落とし所が難しい。
「自重しない火力演習で毛利と武田の力の差を見せつけましょうか」
「ほう。自重しないとは?」
小山田虎親は興味深そうな顔をする。
「鉄砲の御披露目です」
「え?今更だろ?毛利の天狗は空から雷を落として大地を割るって武田でも結構有名な話だぞ?」
小山田虎親が指摘する。
「それは大砲の話でしょう?出すのはライフルの類いですよ。個人で扱える兵器があるということを知らしめるのです」
大砲が毛利の天狗の仙術というのは御伽噺衆による毛利氏の情報操作の一環だからね。
「まあ、うちの諜報部も毛利の鉄砲や大砲の詳細については掴めなかったからなぁ・・・」
小山田虎親の視線が宙を彷徨う。まあそこは謎の起請文のお力というかお蔭で、人の口を通して情報が漏れることはないんだよね。銃をしまってある倉庫とかも厳重に警備しているし。
「そうそう。軍事演習には毛利と武田の模擬戦も加えるのもいいかもしれませんね」
「ほう。このままだと起こり得ない、それこそ関ヶ原の戦いでもやるか!」
「はいそこ。こそっと毛利が負けた戦いを出してこない。位置的には長篠か川中島だろ?」
「そこのふたつじゃあ武田の負け戦確定じゃないか!」
「待ってください。川中島は一応武田の勝利でしょう?」
「そうなの?」
小山田虎親の顔がキョトンとなる。
「五回あったうち第四次以外は小競り合い程度で勝ち負けはなしですが」
そう。武田信玄と上杉謙信が一騎打ちしたという逸話が残る第四次も、互いに勝ちを宣言はしてはいるけど、川中島一帯を支配下地域に収めたのは武田氏だ。もっとも、戦死者の数とか武田信繁とか山本勘助とか討ち死にした有力武将とかは武田氏側が多いんだけどね。
「じゃあ、まあ、いいか」
小山田虎親が納得出来たようなので、毛利氏と武田氏の模擬戦についての話しあいを始めるのであった。
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