第266話 タブレットバージョンアップ!
- 1541年(天文10年)4月 -
朝廷からの宣旨により、元就さまが正三位右近衛大将と鎮西大将軍に任じられたという話は、雪解けと共に商人たちの口コミという形で東北の地を駆け巡った。無論、俺が経営している商会も東北の商人との商売の席でその噂を積極的にばら撒いた。まぁウチが情報の発信元なんだけね。
これにより東北の勢力は奥羽山脈を境に西は毛利氏、東は武田氏という感じに別れ、中立という立場を取る勢力は消滅。今後の勢力争いは武力ではなく表立っては話し合いへと移行することになる。
- 台湾 -
ゆらゆらと目に見えて空間が歪み、光の渦から人の足が生え、やがて下半身、腹、胸、肩、頭が出現する。まるでウル○ラマンのテレポテーションである。
「よっ」
俺は大きく息をはいて30センチほどの高さから飛び降りる。
「おお凄いな」
ペチペチと手を叩きながら司箭院興仙さんが歩み寄ってくる。
「お主の持つタブレットなる道具、まことに真実を写すとはの」
司箭院興仙さんは言った。大縮地の術は術士が観た地にしか跳べないと。なら俺の持っているタブレット越しに見た場所ならどうなるか?
この実験は大成功だった。うん。もっと早く大縮地の法が使えれば便利だったのに・・・
「という訳で興仙殿のガチャ祭は次の一回で終了です」
「まあ、仕方ないの」
俺が大縮地の術を会得するためにかけたこの二週間。不要品でレアリティを上げる小細工も虚しくすべてコモンの日常品を引き当てるという快挙を成し遂げた司箭院興仙さんだったが、その目は濁ってはいない。
今回はガチャで何を出したかではなくガチャを回した事で満足したようだ。
「まあ、これでこれからくる外国との対応が楽になったのは有り難いの」
司箭院興仙さんはそう言って笑う。まあ、あちらが友好的であろうが敵対的であろうが、交渉を持ちかけられたら元就さまを含む上層部の判断が必要になってくる。俺と司箭院興仙さんが間に入って対応すれば、その時間は大幅に短縮出来る。
まあ、対馬のように地元の有力者が明や朝鮮の都合の良いようやってもなんとかなった例があるにはあるが、あれは明も朝鮮も鎖国へと移行していたからであって、国交を開き貿易をメインとし、あわよくば武力で相手国の植民地化を目論んでいる欧州相手ではいきなり戦闘という事態にもなりかねない。それは困る・・・いや困らないか。
いきなり戦闘になっても、こちらが負けることはないし、これが原因で西洋と交易出来なくても特に問題はないんだよね。カボチャ・タバコ・トウモロコシなどの南米産の作物がなかなか入って来ない可能性があるけど、この辺は東南アジアの国々と交易をやっていれば、いずれ間接的に入って来るだろう。
「なにが出るかな?なにが出るかな?ちゃらららちゃ、ちゃちゃらちゃちゃちゃらら~ポチッとな!」
司箭院興仙さんがここー月ほど嬉々として押していたガチャを押す。
【SSR】タブレットⅤer2.0
「おぉぉっと!」
思わず声が出る。
「お?これは欧仙が持っとるタブレットかの?」
司箭院興仙さんがすぐに思い当たったらしく指摘する。
「どうやらそのようです。型式は最新のようですが・・・」
比較のためアイテムボックスからタブレットを取り出し、並べて見る。
[上位モデルの存在を確認しました。ソフトウェアのバージョンを更新しますよろしいですか?はい・イエス]
を!何か選択出来るけど拒否権ない選択が出たぞ?まあ、はい一択なんだけど・・・
はいを選ぶとタブレット全体がチカチカと白く光り出す。
[バージョンアップに成功しました。再起動します。]
ビボッと電子音が鳴り響いてタブレットが再起動するのと同時にタブレットが淡い光に包まれる。
光が消えると、そこには新品同然のタブレットが2台出現する。すげーな。小さなキズとかも完全に消えてるぞ。あとこれ、一台は司箭院興仙さん用ってことかな?
「これは?欧仙のタブレットと同じ?」
「はい。どうやら同じもののようです」
タブレットの画面を見ると、アイコンが4つ。カメラと通信アプリと辞典と翻訳ソフト・・・翻訳ソフト?
ああ、もしかして、これを使ってこれから来る外国人と折衝しろってことかな?うむ。とりあえず司箭院興仙さんに使い方をレクチャーするかな。
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