第162話 姫山城の戦い - 赤松氏滅亡

 - 播磨(兵庫南西部) 姫山城 -


 2発目の破裂音が空を震わせ、その直後に姫山城の城門が木っ端微塵に吹き飛んだと聞いて、砲撃の停止を指示し俺は物見櫓の上に素早く登る。

 観測員から望遠鏡を借り受け戦場を見る。望遠鏡には城を遠回りに包囲していた毛利軍から鬨の声が上がり、包囲が狭まるのが見える。

 先陣を行くのは、旗物差しから毛利に臣従して間もない浦上氏の浦上政宗くんの守役である浦上国秀さん島村盛貫さん角田佐家さんであることが判る。

 なにしろ城に籠る赤松政祐は、先代の浦上村宗を援軍を装って騙し討ちした仇敵である。遠目に見ても殺る気満々だ。

 まあ、浦上氏がウチに臣従するときに赤松政祐を浦上氏の縁者に討たせてほしいという要請があったからだけどね。

「とう!」を掛け声をかけて櫓から飛び降り元就さまたちの元に戻る。


「さて、姫山城はどのくらい持つかな?」


「60分を単位に賭けましょうか」


 元就さまの言葉を受け、俺は3×3にマス目を区切った台の上の真ん中にガチャで出た30分が計れる砂時計をどんと置く。ちなみに毛利領内では時間の単位をアラビア数字で表記することで統一している。

 時間を計るのはメモリを12個刻んだ水槽を3基備えた水時計。主要な場所に設置して、1時間ごとに鐘を鳴らすことで時を知らせている。火災時の消火水槽も兼ねている。水は手押しポンプで循環させているので経済的だ。

 水を補充し鐘を鳴らすのは子供と年寄りの仕事でもある。結構人気。猫時計は携帯用。いいね?


「「「「ではそれがしは」」」」


 軍議という名のお茶会に参加していた福原広俊さん中村元明さん渡辺勝さん粟屋元秀さん桂広澄さん口羽広良さんが台の上に家紋が刻まれたタヌキコインを置いて行く。

 敵の降伏時間をかけてのトトカルチョである。一番人気は3時間だ。

 ちなみに、タヌキコインは正月とお盆に、半期ごとの働きを評価されて元就さまから直接下賜される。お盆玉、お年玉という名前で広めておいた。

 なお、お年玉の習慣自体は鎌倉時代のころから既にあり、武士は刀を町人は扇を贈っていたという。江戸時代だと夏は氷代、冬は餅代を配るという風習もあったようだ。

 価値は、メダル10枚で一斗樽(18リットル)の酒と交換できる。酒以外のものにも交換できるけどいまのところは酒一択である。

 交換品人気の上位三品は、司箭院興仙さんが主導して造っている葡萄酒。尼子国久さんが主導して造る本醸造酒。そして俺が造る麦の蒸留酒。

 どの酒も金を出せば普通に買える品だけど、コインを種銭にしたギャンブルでコインを稼ぎ、酒と交換するのが基本だ。解せぬ。


「浦上国秀隊。姫山城の城門に取りつきました」


 観測員が叫ぶ。


「では、賭けを始めましょう」


 俺はその場にいた全員の顔をぐるりと見回し砂時計をひっくり返す。ガラスの中をさらさらと砂が落ちていく。



「えい、えい、おー」


「「「「「えい、えい、おー」」」」」


 砂時計が2度ひっくり返ることなく姫山城は陥落したようだ。

 赤松政祐らしき男の首か括られた長槍を持った男が、破壊された城門から出てきたそうだ。

 うん。実際に陣内に勝鬨が聞こえたり見えた訳じゃなく、組まれた櫓の上にいた観測員からの報告。

 賭けは渡辺勝さんのひとり勝ちだったよ。渡辺勝さん、史実では坂氏の謀反に呼応して元就さまに謀反を企てて逆に討たれている。今回,、志半ばに討たれた赤松政祐とは違う運命を・・・いや、それを言うのは今更か。

 

 播磨(兵庫南西部)を支配していた赤松氏の討伐を果たした元就さまは、それまでの方針を変えて赤松氏配下だった一部の国人衆に対し、九州や四国の大名たちと同様の領地召し上げのうえに銭による再雇用という条件で臣従を迫った。まあ、事前に俺の諜報機関「御伽衆」を通して工作していたから大きな問題は無かったけどね。

 とくに黒田重隆・黒田甚四郎親子と遺伝子的な意味で明石正風も抱えておく。何より明石氏は書や和歌に造詣が深く、明石正風自身も左大臣である近衛稙家に和歌を伝授した文人でもあるからね。そっちの枠でスカウトしておいた。

 播磨の支配が完了した元就さまは、毛利氏古参の(なお元就さまの古参ではない)井上就在さんと兵5000を播磨の治安維持のために置くと三好長慶くんの軍を道案内に京へと入る。三好長慶くんの軍を道案内にしたのは、三好氏の毛利氏での立場をアピールするためだ。ちなみに実質トップである三好海雲さんは、現在とあることで暗躍中である。

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