第102話 阿輸迦(アソカ)作戦 上陸
1528年(大永8年)5月
- 安芸(広島) 仁保島 仁保城 -
仁保城は京橋川の河口近くにある仁保島(現在の黄金山)にある城で、数年前までは白井水軍のいまは瀬戸内毛利水軍の拠点のひとつだ。港の少し高くなったところに戦装束の元就さまが立つ。
「これより我らは豊前(福岡北東部から大分北部)の大内を助け、豊後(大分南部)の大友を討つ。出陣!」
「「「「「応」」」」」
兵士たちの野太い声が上がり、つぎつぎと港に停泊している
ここで
なお同型小型艦である
「出港!」
俺の号令で『
「なんというか、壮観だな」
今回の豊後急襲の総指揮官である福原広俊さんが声を掛けてくる。
「この作戦が成功すれは、九州、四国の国人衆は一気に毛利になびきますからね。重要ですよ」
「おいおい脅かすなよ」
俺の言葉に福原広俊さんは苦笑いするが、考えても欲しい。ある日突然、自軍の後方に8000近い兵が展開するのだ。脅威といって良い。
「福原さま畝方さま。よろしいでしょうか?」
「行程の見積もりが?」
「はい。風の向きがよいです。明日の明け方には豊後沖に到達できるかと」
いまが辰の刻(9時)で、うーむ思った以上に早く着くな・・・
「夜討ち朝駆けは習いかと」
今川貫蔵さんが実にいい笑顔で話しかけてくる。覆面をしていない今川貫蔵さんは渋いナイスミドルのオヤジだ。今回は九州侵攻のための情報総責任者だから、俺の隣りで指揮を執って貰う。あと今川貫蔵さんが畝方氏の重臣であるという毛利氏内でのアピールも兼ねている。
「いけるかね?」
「大丈夫かと。大友もいきなり本拠地が攻め落とされることは想定してないでしょうし」
福原広俊さんの問いに今川貫蔵さんが自信たっぷりに答えてくれた。
- 豊後沖 -
- 三人称 -
ゆらり
海の上に人魂のような明かりが燈る。やがて更に沖の方でも人魂が燈る。揺ら揺らと人魂が沖の人魂に近づく。場所的に不知火を想像する人間がいるかもしれないが、当然そんなことはない。
「どうだ?」
闇の中で今川貫蔵の声がする。
「佐賀関の守備兵は100に満たない。寝ずの番もなく暢気なものです」
声が返ってくる。佐賀関は大友水軍の本拠地だ。
「そうか。首領。行けそうです」
「ということです左近允さま」
畝方元近は今川貫蔵の声を受け、隣りにいる福原広俊に尋ねる。
「よし
「はっ。
「はっ」
福原広俊の作戦開始の声を聞いて、艦に備え付けられている兵を乗せた小舟が降りていく。暗闇の中、艦と浜辺の間を小舟が往復。じりじりと日が昇るころには浜に300人ほどの兵が展開する。
「攻めろ!」
福原広俊の命令で、佐賀関にある若林仲秀の館に兵200が攻め込む。同時に兵100が港へと雪崩込み、素早く占拠。兵のひとりが腰に吊っていた袋に火口棒(竹製の
それを確認した沖に停泊していた
「佐賀関に海賊が襲来した」という報告は即座に西山城にもたらされ、直ちに西山城から兵300が出陣したが、佐賀関についた頃には毛利軍兵2800が既に展開した後だった。
「蹴散らせ」
再び福原広俊は号令を下す。西山城の兵士は蹴散らされ、日が中天に登る頃には西山城は陥落するのであった。
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