第43話明(中国)で上がる煙

 引きたい物は何ですか?当たり難いものですか?何度引いても確率を上げても当たりは引けないのに、まだまだ引く気ですか?それより、それ以上はいけない。物欲センサーがキャラック船ビクトリア号を作る(全120巻)に物欲全振りだったお蔭か、かなり久しぶりにゴーレムを引いた。

 なんと木工ゴーレム!意図がスケスケじゃあ!!司箭院興仙さんが小躍りしていたけど・・・

 俺は司箭院興仙さんの要請を受けて、出雲(島根東部)から宮大工の頭領である平衛さん(畝方村の宗教施設を手掛けてくれた人)と文左衛門に紹介された船大工を招聘。校舎という名の掘っ立て小屋の隣りに、なにやら仰々しい土台が司箭院興仙さん主導で構築され始めた。

 麓にある郭の中の空き地に加工された材木が積み上げられる度に、木工ゴーレムが水を吸うように船大工と宮大工のスキルをガンガン取得しているのが怖い。仏師とか誰から習ってるんだ?南の第二郭に、この城でどこよりも立派なお寺が一番最初に建ちそうだ。


「司箭院殿。この木材にある逍遙院って・・・」


「ああ、昔助けてやったことがあってな。」


「見てはいけないやんごとなき方の名前が」


「前管領殿といろいろやらかしたからな」


 何やら聞いてはいけない単語が司箭院興仙さんからポンポンと飛び出す。昔、京で管領の細川政元とともに粋に暴れ回っていたというのは本当らしい。



 学校に通う子供たちの朝は早い。そして俺の朝も早い・・・司箭院興仙さんは修験道の奥義を極めた御仁なだけあって、まず子供たちに体力を付けることを求めた。

 まず飯屋をスタート地点に北の山の山頂に登らせ南の山の山頂に登らせ、南の山の郭をゴール地点に歩かせる。全員のデータを取った後に4つのグループに分け、山登りのランニングを始めさせた。

 折角なのでランニングのときの掛け声に九九の掛け算を採用させる。周りは九九の掛け算を知らないから掛け声がおかしいと思わないだろう。覚えるのは5の段までだけとね。

 たぶん計算に必要な掛け算の基礎知識を間違えることなく覚えるだろう。たぶん・・・

 ランニングには丁稚も三郎四郎くんも参加させる。もちろん俺もランニングに参加する。そこに慈悲は無い。


 ランニングの後は学校でガッツリ朝ごはん。雑穀飯のおむすびに、前日にいい成績を叩き出した子供には選べるオカズが出される。人気のオカズは卵、魚や獣肉の焼き物、海苔、漬物、野菜。雑穀飯ではなく切り蕎麦や白米を選ぶ子供もいる。

 午前中は読み書き算数といった座学。司箭院興仙さんは公家と渡り合っているぐらい作法にも明るいので作法も教えて貰う。午後からは個々の適性を見て武芸を教える。修験道系の忍者学校だよね。三郎四郎くんが嬉々として技術を習得している。実際に史実でも元就さまと互角の戦いをする武将なんだよね・・・



 1523年(大永3年)5月


 念願だった日刊ガチャ キャラック船ビクトリア号を作る(全120巻)をコンプリートした。栄えある最後の一冊「キャラック船ビクトリア号を作る第1巻」が船の設計図と竜骨だったのは嫌がらせとしては最高だと思う。まあ、竜骨以外は部品まで現物が完成しているから、あとは船大工さんが模型を組み立てるように実物を作り上げるだろう。


 この年この月に日本の外交に影響を与える事件が起きるはずだ。

 関係ある事柄は日明貿易。またの名を勘合貿易。歴史で習う室町時代前半の出来事と言えば金閣寺の次位に出てくる単語・・・だと思う。

 金閣寺建立で有名な足利義満と明の建文帝の頃に開始されたもので、当時中国沿岸を荒らしまわっていた倭寇と区別するために勘合符というものを発行して相手を承認していたことで有名。

 で、大内氏と細川氏は勘合符を巡って対立してたけど、明で正徳帝が即位したときに発行された正徳勘合符を大内氏が独占。のちに大内義興さんが将軍足利義稙を奉じて上洛したご褒美として永久的に日明貿易を独占することが保証されたんだけど、俺はここに茶々を、管領の細川高国を煽ったのだ。

 大内義興さんが北九州でおきた反乱で動けない隙を突いて、細川高国は鸞岡端佐らんこうずいさを使者に、既に無効となった弘治勘合符を持たせて遣明船を派遣。俺がその情報を大内義興さんに渡すと、大内義興さんは慌てて謙道宗設けんどうそうせつを使者に遣明船を派遣したようだ。

 順番が逆になって、明との貿易窓口になっている寧波には、鸞岡端佐の遣明船のほうが先に着くことになる。さてどうなることか・・・

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