第42話学校を作ることにします。先生はヤバイ人です。
1523年(大永3年)1月下旬
訃報が届いた。西隣の国人で小倉山城の城主である吉川氏13代当主吉川元経さんが亡くなった。晩年の様子からして死因はガン。俺としてはガチャで出た鎮痛剤を渡すぐらいしかお役に立てなかったけど、史実より1年長く生きたことになる。
吉川国経さんと宮庄経友さんからは物凄く感謝されたけど、なんだか凄くもにょる。吉川氏の家督は今年5歳になる元経さんの嫡男千法師さん(※史実では1508年と1518年説があります)がすぐには継がず、しばらくは祖父の国経さんが吉川氏の頭領として家を仕切るそうだ。
つぎに、元就さまが毛利宗家の頭領になったことで、義弟で鍋谷城の井原元師さんが元就さまの一門衆として毛利氏に帰属。
また何度かの交渉の末、五龍城の宍戸氏が毛利氏に従属した。史実より11年も早いけど、四方を毛利氏の城に囲まれ、経済活動も毛利氏に完全に握られた宍戸氏に抵抗する術がなかったのが大きい。宍戸氏を攻め滅ぼさなかったのは、
宍戸氏が毛利氏に従属したことで、宍戸元源さんの弟である
桂広澄さんと司箭院興仙さんを副将として、合計500人で矢滝城を守ることになる。やばい。矢滝城の収穫は308石。早急に耕作地倍増化計画を立てねば!
萩屋文左衛門に複式簿記を教えたのをきっかけに萩屋文左衛門の店の丁稚が文字や算数を習いに来るようになった。いわゆる「読み書きそろばん」というやつだ。折角なので配下の育成に手を付ける。
まず矢滝城の南の山の中腹の郭に学校を作ることにする。学校にやってくる子供は店の丁稚である必要は無い。武士の子供であろうが孤児だろうが、貧乏だろうが金持ちだろうが、男だろうが女だろうが関係ない。親がいる子は通いで、孤児は麓に下宿を用意する。
学校にさえ来れば、朝夕に雑穀飯が食べられ昼には蒸かした
募集から五日で32人ほどの子供が集まったので募集を締め切った。なお、男女比は半々。内訳は農民の子が3人、兵士の子が10人、孤児が16人、文左衛門のところの丁稚が3人。丁稚の子は毎日来るわけではないそうだ。
先生は司箭院興仙さんにお願いした。司箭院興仙さんの本名は深瀬家俊といい宍戸元源さんの末弟。京の鞍馬寺で細川京兆家の細川政元と出会い仕官。政元の側近として辣腕を振るった人物で、僧籍にありながら兵法、剣術、槍術、薙刀に秀でていて、後に剣術は貫心流、薙刀は司箭流の開祖となった人。
それ以上に驚愕なのが、吉川経基さんが人の化け物なら司箭院興仙さんはファンタジーな化け物だということ。若いころから山伏としての修行に明け暮れ、由利正俊(源義経の家来だった由利忠太正之の子孫と思われる)から源義経の家伝の法を伝授されたらしい。
源義経の家伝の法というのは天狗の法。愛宕の神を信仰して飛行自由まで修得したという。うん。矢滝城の北の山の一番高い物見櫓から南の山の中腹の郭の学校の(予定地)までぴゆーって飛んできたよ。子供たちが大喜び。後に学校が、愛宕権現と愛宕太郎坊天狗を祀る愛宕司箭院という寺になるのだが、それは別の話かな。
「領主さま。邪魔をするぞ」
矢滝城の麓に作った「麺屋」という名前の飯屋で蕎麦。(麺としての蕎麦は、1574年に「定勝寺の修復工事でそば切が振舞われた」と定勝寺文書に書かれたのが最初だけど、石高アップまでの主食として投入することにしたのだ)を啜っていたところ、謎の出雲商人が10歳ぐらいの子供を連れてやって来た。
「切り麦(冷麦)・・・ではないな?色が違う。切り麦は白いはずだ」
「蕎麦切ですよ。小麦粉と蕎麦粉を混ぜて水で練って切ったものです。おおーい店主。二八の蕎麦を冷でふたつ」
謎の出雲(島根東部)商人の疑問に答えてから店主に注文を出す。すぐに「あいよー」という言葉が返って来てくる。出てきたざる蕎麦の食べ方をレクチャーすると謎の出雲商人と子供は旨い旨いと言って完食した。
あ、お代わりが欲しいですか?「おおーい店主。追加で二八の蕎麦冷でふたつ」と叫ぶ。
「で、何の御用でしょうか?ひとつは塩浜でしょうが・・・」
「ああうん。三四郎が学問所を開くと聞いてな。儂の一族の子で三郎四郎というのだが、お主に預ける」
「はい?」
「儂の都合でお主の嫁取りが遅れておるのだ。人質だと思ってくれ」
口調こそもっともらしいが、明らかに本心でないのが判ってしまう。それに、謎の出雲商人の一族でいま10歳前後の三郎四郎って謎の出雲商人の亡き長男、尼子政久の次男 (9歳)のことだろ!
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