第21話一向一揆?知らんな!
1518年(永正15年)1月。
元就さまと吉川国経さんの娘、妙さまの婚礼が行われた。参加者は毛利氏と多治比氏と吉川氏の家臣に加え、渋川義正さん、井原元師さんといった元就さまの義理兄弟にあたる国人衆。永正の安芸(広島)国人一揆と呼ばれる、国人同士の相互扶助を目的とする国人一揆契約を結んだ9人の国人衆・・・
平賀弘保さん、小早川弘平さん、阿曽沼弘秀さん、野間興勝さん、天野興次さん、天野元貞さん、高橋元光さんから使者が来ている。ちなみに小早川弘平さんというのが、のちに毛利両川と称される小早川隆景が養子に入る竹原小早川家の現当主だ。
あとは有田中井手の戦いで新たに毛利側に従属した国人衆も顔繋ぎのために来ている。大変だな。
俺が貰った村は、元就さまの多治比猿掛城と志道広門さんの三入高松城と井原元師さんの鍋谷城を直線で結んで三角形を描くとその三角形のほぼ真ん中の地点にある。
週始めに二日ほど多治比猿掛城に出仕して執務。週中に二日ほど三入高松城に入り残り執務。週末三日に村で執務というローテーションを組んでいる。
三入高松城に行くのは、三入高松城が安芸武田家の重臣である香川家の支配する八木城に隣接しているから。とりあえず三入高松城の麓にある館の石垣をコンクリートで嵩上げして強化することを提案している。
材料となるセメントの原材料である石灰石の鉱山がそう遠くない場所にあるからだ。なお石灰と粘土を混合して焼成してから砕いてセメントとし、砂と砂利と水を混ぜればコンクリートになる。
1518年(永正15年)2月
村での田起こし前に行ったのは検地。正条植えを行う区画整理のための下準備だ。計測された土地より1.5倍の大きさの土地を村はずれの荒れ地に用意し、領主権限で強制交換。
無論、支度金として去年の収獲と同じ額の金と年貢の1年免除。はねくり備中というテコの原理で土を掘り起こす農具の貸与。それに技術指導と
いままであった田んぼは一度更地にして大豆や菜の花を植える。大豆は馬の飼料で菜の花は植物油の抽出用だが、田んぼを交換したことで作付けに差が出ると不満が出るのでそれを逸らす目的の方が高い。
つぎに簡素だが村人の信心のための寺を建てる。最初、安芸は安芸門徒という浄土真宗の信者が多数を占める土地で一向一揆の多発を恐れていたけど杞憂だった。
1518年の時点でこの地域の浄土真宗といえば、安芸武田氏が庇護している仏護寺の第二世円誓が1496年に改宗して教えを広めた比較的新しい宗派。しかも専修寺系いわゆる真宗高田派の集団だった。
さらに言えば仏護寺は庇護していた安芸武田氏の衰退と共に勢力が弱まり、1552年に元就さまの庇護を受けるまで寺の再建すらままならない勢力でもある。
毛利氏が一向一揆で有名な本願寺派と組むようになるのは、本願寺が毛利輝元に支援を依頼する石山合戦以降なのだ。つまり本願寺派と接触しない限り一向一揆は起きないということになる。
ただ、油断はならないので浄土真宗以外の宗派の坊さんを呼ぶべきだろう。第一候補は村人も信仰している浄土宗か?ちなみに毛利氏の菩提寺であるお寺の宗派は、一休さんこと一休宗純を輩出した臨済宗のお寺だったりする。
あと寺の敷地内には神社と神楽殿も建設する。神社はお稲荷さんにするかな?神仏合習が盛んなので同一領地内に寺と神社があるのは問題なかったりする。境内には石鹸としてのムクロジや植物油を取るための椿を植える。ムクロジは女性用避妊具らしいが・・・
こうしてみると建物以外は簡素だな。枯山水の庭でも作るか?鯉のいる池も欲しいな。
1518年(永正15年)4月
田植えの作業が始まった。荒れ地の田起こしから始めなければならなかったが、はねくり備中が大活躍したおかげで不満は起きなかった。夜中にこっそりゴーレムがやって来て耕作地と水路を広げていったとかそんなことは無かったよ(棒)
種籾は塩水で育てるものを選別する。これは塩分濃度が高い水は比重が大きくなり、浮力も大きくなるので、実の詰まってない種籾は浮き、実の詰まった種籾は底に沈むのだ。餞別した種籾はポットに小分けで撒いてある程度の高さに成長するまで俺の元で育てる。
これまでは代掻きした田んぼに直接種籾を巻いていたから発芽効率からして悪かったのだ。ある程度、苗が育ったら田んぼに水を入れて代掻き。田植定規で等間隔に植え付けを行う。大きく育てよ。
「三四郎さま。これはなんでしょう?」
12歳となった松が鈴蘭と桔梗を従えてやって来た。市で奴隷として買ったときはガリガリだったが、4か月経ったいま、松たちの成長は著しかった。とくに松の成長は身体も精神も早い。最近は秘書みたいなことをやってる。
「養蜂箱という蜂蜜を効率的に取るための道具だよ。刺されるからあまり近寄らないように」
「はい判りました。あ、四郎さまが探しておいででしたよ」
本当、成長早い・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます