第3章 内政重視のターン 領地開墾
第20話俺が貰った村は
俺が貰った村は、元就さまの多治比猿掛城と志道広門さんの三入高松城と井原元師さんの鍋谷城を直線で結んで三角形を描くと、その三角形のほぼ真ん中の地点にあった。
ただ村から多治比猿掛城まで行くには山を越えるか大きく山を迂回する必要があるのがめんどくさい。ただ近くに比較的大きな川があるので灌漑を行えば肥沃な耕作地が出現するだろう。
もっとも水源確保は近隣の村との間で最もポピュラーで最も深刻な争いを引き起こすのでやりすぎには注意が必要だ。その辺も調べて調整する必要がある。
1517年(永正14年)12月下旬。
論功褒賞のあった暫くあとに有田城城下で市が開催された。別名追い剥ぎ市。メイン商品は有田中井手の戦いで死んだ兵や敗走する兵が捨てていった武器や防具。出身村からの身代金が払われなかったことで売り出された捕虜。乱取りで攫われた女や子供というのもいる。
俺の領主としての最初の仕事は、褒賞で貰った金で村の住民一人の身代金を払う事だった。お値段は500文。
この時代、こういう形での人身売買は普通にあったので、現代の倫理感をもって非難することはできない。なので、出来る範囲で偽善を行う。
まず、市場で売れ残っていた年長でも12歳に満たない女の子12人を纏めて買った。攫われた、というよりは安芸武田家についた有田城周辺の国人衆の治めている村で間引かれた子供だろう。
今回の有田中井手の戦いでは、400余人の人間が戦死して800人近くの人間が大怪我を負い、50人近い売られる奴隷が出たのだ。安芸武田家の無理な動員で働き手に壊滅的な被害を受けた村では、知り合いを頼って他の村へと逃散するか、来年の収獲不足に備えて口減らしをしなければならない。
女で子供というのは生産性が低いので、こういうとき真っ先に売られ大抵は売れ残ってしまうようだ。なお12人でお値段50文だった。奴隷落ちした雑兵の通常価格か一人につき約1~2貫文。大量に捕まった戦では25文に急落するらしいが、さらにその6分の1とは世知辛い。
「お前たちは、御座替神事を覚えてもらい、秋に村で奉納してもらう。身体を作ることも仕事だ」
俺の言葉に買われた少女たちはキョトンとしている。御座替神事は、神の座る御座を取り替えたときに御座を清めるための採物舞と、日本神話や神社縁起などを劇化した神能からなる神事で中国地方では佐陀大社の神事が有名だ。
もともとは春になると山の神が山から降りてきて田の神となり、秋には再び山に戻るという農民の間で広がる信仰が元になっている。神格が変わるのだから神の座る御座は取り替えよう。その際に踊りを奉納しようという訳だ。まあ解らなくても当然か・・・
「秋に収穫を終えた村々を回って、踊りを踊って村人を楽しませる集団をつくる予定だ。豊穣を祈る集団だから貧相な身体では申し訳ない。食べて身体を作ってもらうぞ」
今度は仕事があり食べることが出来る事を理解したのだろう。年長らしい少女がワンワンと泣き出した。遅れて涙の輪が広がる。それとは別に村々の情報を集め、こちらに都合の良い噂をばら撒くのも仕事なのだが、これはまだ言わないでおこう。こちらは少なくとも5年6年先の話だ。のちに三入高松神楽団と呼ばれる、芸能と諜報の集団の誕生である。とりあえず、佐陀大社から人を呼ぶか。
あ、女の子たちの名前が「いね」とか「よね」とか汎用なものが駄々被りだったので改名させた。最初は花シリーズでいいな。年長者から順に松、梅、杏、桜、鈴蘭、霞、ひなげし、朝顔、桔梗、菊、花梨、スミレ。松、梅、杏、桜の4人を組頭として下の子供たちの世話をさせることにする。
つぎに農業奴隷として男衆を3人買い入れる。彼らは3人で1貫文。捕虜がそれなりに出たので、彼らの村の貯えでは彼らを買い取ることが出来ず奴隷落ちしたのだという。奴隷に落とされると元の村には戻れないそうだ。逃げると買主から追手がかかるからだ。
また縁のない他の村にも逃げられない。大抵は奴隷より扱いが酷くなるからだ。身元の分からない余所者が生きていくにはかなりのリスクがかかる。
男衆の名前は25歳の五平太、23歳の五朗、19歳の次郎。彼らは
多治比猿掛城の麓の村に作った
山は開墾ゴーレム、鍛冶ゴーレム、木こりゴーレム、畜産ゴーレム、鉱夫ゴーレムの五体に警戒活動しているニホンオオカミ10頭が駐在する拠点だ。村人には炭焼きや陶器の窯を作っていると説明しオオカミが住んでいるから山に入るときは許可を得るよう言い含めておく。
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