第2章 有田中井手の戦い編
第6話多治比元就さまとの邂逅
1516年(永正13年)3月。
春が来た。俺が拠点に定めた村はイイ感じに育っている。住民はガチャの開墾ゴーレム、鍛冶ゴーレム、木こりゴーレム、畜産ゴーレム、鉱夫ゴーレムの五体にニワトリが6羽。村を警戒活動しているニホンオオカミ3頭。これに、ゴッドアイアースの索敵可能範囲を広げるため東に移動しているニホンオオカミの群れが10組50頭。西に移動している全長50センチのタカ科の鳥であるノスリが1羽がいる。
現時点での食糧の備蓄は、確か成人一人が一年に必要な米の量がほぼ1石で、1石を150キロと換算するなら
村の廃墟は、村長の家と蔵を改修した以外は全て解体。家一軒分の資材をアイテムボックスに収納した以外は全てエクスチェンジしてアイテムに変えた。アイテム運は、あれからほぼ1年経つが、SSRはゴーレム2体のみ。いまのところ1日1回で365分の1だから渋くはないが、なんかもやっとする。
さて、ついに1516年(永正13年)である。この年の9月21日に毛利元就の兄であり毛利氏の当主である毛利興元が急逝する。原因は、吉田郡山城から北東に近接する五龍城の国人宍戸元源との戦いで思うような戦果が得られず、その心労から酒に走り、父である毛利弘元と同じ酒毒で死ぬ。毛利家は興元の子である毛利幸松丸が継ぎ、毛利元就は叔父として毛利幸松丸の後見につくはずだ。
当主の急逝、二歳の新当主。その動揺を突くように翌年の1517年(永正14年)2月に佐東銀山城主である武田元繁が動員をかける。
同年10月。吉川領である有田城奪還のため侵攻。元就の初陣となる、後の世に西の桶狭間の戦いと称される有田中井手の戦いが起きるのだ。
つまり、毛利元就に近づく絶好のチャンスだ。今日は有田城周辺の地形調査にでも行くかな。ゴッドアイアースで検索できるとはいえ、一度は直接見ておいたほうが良いだろう。
SIDE 多治比元就
面長で涼やかな切れ長の目。イケメンな青年が「ふう」とため息をつく。イケメン青年の名前を元就という。
彼は悩んでいた。多治比家を興して五年経つが人手が全然集まらない。とくに兵士。騎兵はようやく120騎に届くかどうか。これは、兄であり当主である興元が北に近接する国人の宍戸元源との戦いを延々と続けているのがひとつ。そして、主家である大内氏に従属していた南の武田元繁が、反旗を翻し勢力を拡大しているのが原因だ。
特に武田元繁は、毛利吉川連合に奪われた有田城の奪還を狙っている。有田城は先年に吉川氏と共に攻めて吉川氏の所領となった城だが、攻められれば自分が後詰めとして兵を出す必要があるだろう。武田元繁は智勇に優れ、若い時には項羽と恐れられた武将である。頭が痛い。
それと興元が、宍戸氏相手の戦に思うような戦果を挙げられず酒に溺れて体調を崩している。父の弘元も酒毒が原因で早世したのに、なぜ酒に走るのか、理解できない。本当に頭が痛い。
「殿さま。準備が整いました」
「判った」
多治比元就は立ち上がり馬屋へ向かう。
後詰めとして有田城に向かう可能性があるからと、定期的に馬による有田城への遠征を行うようにしているのだ。多治比猿掛城から3騎の馬が出立する。
道なりに進んでいた多治比元就は目の前に鎧櫃を背負い槍を担いで歩いている青年を見つける。近づくとすっと道の脇に避けて膝まづき、タレ気味の眼の平々凡々な顔を下げる。
槍がかなり良いのと、馬が近づいたのを知って道を譲る態度から、少しは戦場を渡り歩いている傭兵だと当たりを付ける。
SIDE 三四郎
のんびりと歩いていた俺の後ろから複数の蹄の音が聞こえてくる。とりあえず通行の邪魔にならないように道端に避けて、持っていた槍を地面に置いて跪く。
「おいそこの者。直答を許す。傭兵か?」
馬が止まり頭上から声が降ってくる。いまの俺は作務衣のような服に草鞋。ボロい鎧櫃を担いでいるいわゆる流しの傭兵ファッションだ。ふつう農繁期に昼間っから農民ファッションでぶらりお散歩とかあり得ないからね。
「はい」
頭を下げたままで答える。
「頭を上げよ。どこの出だ」
「はぁ・・・場所の名前は判りませんが、あっちの山の奥です」
頭を上げると、そこには3騎の馬に乗る武士。三人とも、俺的の感覚的には若い。が、腰に太刀を吊っているということは全員が元服済みだろう。俺は拠点のある山の方を指さす。
「隠れ里・・・でしょうか?」
指出した方を眺めていた三人のひとり、背の高いわずかに吊り上がった糸目の兄ちゃんが一番身分の高そうな高そうな服を着た人物に声を掛ける。
「広長の記憶にはないのか?」
「少なくとも・・・」
広長と呼ばれた青年は小さく頭を振る。
「お、ああ、名前を聞いて無かったな。俺は多治比猿掛城の城主で多治比というものだ」
身分の高そうな高そうな服を着たイケメンな青年はニカっと笑う。
多治比猿掛城の城主で多治比と名乗る青年・・・のちの毛利元就であった。
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