流煙に溶ける
七夕ねむり
第1話 流煙に溶ける
俺達はどうしても同じものになれない。いつも周はそう言って痛そうな顔をし、それから必ず下手くそに笑うのだ。それがどういう意味なのかわからないし、知るつもりもない。
「周、寝た?」
「寝てる」
「それ寝てるって言わないよ」
知ってる。薄暗い部屋のなかでごそりごそりと音がして、彼が此方へ向きを変えた。
「眠れないのか?」
少しだけぶっきらぼうに話す言葉が嬉しくもあり、ちょっとだけねと笑ってみせる。
「泊まり久しぶりだからさ、嬉しくて」
「ガキかお前は。明日も早いんだ、もう寝ろ」
はーい。子供のような返事をして布団に首を埋めた。本当はとても眠れる気分ではなかったけれど、周のお小言は勘弁願いたい。そう思っている時ひゅう、と一陣冷ややかな風が舞い込んだ。目を凝らすと薄暗い空間に小さな灯りが宿り、周の姿を朧げに照らし出していた。眉間の皺は相変わらずで、美味そうに吐く煙は夜の元へと消えてゆく。
「美味いな」
別に何も聞いていないのに、周は一人でそう呟いた。煙草の美味さとやらはわかりそうにないけれど、周の優しさは少しわかった気がして今度こそ本当に眠ろうと瞼を閉じる。
このまま甘やかな空気を胸一杯に満たして、流煙に溶けてしまいたいと思った。
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