第42話033「世界の構成と摂理」
「さっきも言ったが、世界を構成しているのは
ハヤトが早速、『世界の構成と摂理』の話を始めた。これの理解深度によって『
「
「⋯⋯え?」
「何っ?! 魔力の属性に繋がっているだと?」
ソフィア先生がハヤトの言葉にかなり驚いている。私もだ。しかし、他の生徒はそこまでピンときていないらしい。あ、ビンセント・ミケランジュはさすがに反応しているね。
「ああ。『火・水・土・風・光・闇』の六属性⋯⋯⋯⋯これが
「し、信じられん。にわかには、どうしても⋯⋯」
「⋯⋯」
私もソフィア先生と同じでハヤトの言葉を聞いた時、頭では理解しようとしても体全体が拒否反応を示している。
「おそらく皆、俺の話を聞いて拒否反応を示しているだろう? それが、この世界の真実を隠した者たちの数百年に渡る洗脳の効果だ」
「「「「え⋯⋯洗脳?」」」」
「体内にある魔力の優劣で価値基準を測る『魔術士ランキング』⋯⋯⋯⋯これを常識化する為には俺が使っている大気の魔素を取り込む魔力供給は邪魔だからな。だから、それを隠して『魔術士ランキング』という新常識を数百年に渡って擦り込んだのだ」
「「「「!!!!!!」」」」
ハヤトの言葉に皆が激しく動揺する。
「たぶん、言葉だけなら誰も俺の話に耳を貸さなかっただろう。だから、俺は先に
「なるほど、な⋯⋯」
さすがのビンセント・ミケランジュもハヤトの話は受け入れられていないようだったけど、納得はいった表情を見せている。そして、それは私も同様だ。けど、目の前であんな常識をひっくり返すような『現象』を先に見せられたのだ。おかげでハヤトの言葉を否定することができなくなっている為、体全体がハヤトの言葉を否定したがっているのと目の前で起こった現象の事実に脳が混乱。結果、それが動揺という形で表に出ているのが現状である。
「⋯⋯正直、俺もまだハヤトの言葉に脳や体が拒否反応を示している。だが、ハヤトが言葉で説明する前に目の前でその『現象』を見せてくれたおかげでこの拒否反応を取り除けると俺は⋯⋯⋯⋯強く感じる」
「ビンセント⋯⋯」
「そうだな。私もビンセント・ミケランジュに同意見だ。ハヤトはそれをわかって先に『現象』を見せたのだろう?」
「ソフィア先生⋯⋯⋯⋯ああ、そうだ」
「なるほどね。つまり、私もソフィア先生もまんまと⋯⋯⋯⋯ハヤトの策略に乗せられたというわけね」
私はハヤトに乗せられた悔しさと、世界がひっくり返る事実を知ったことの嬉しさという何とも相反する感情を抱いた笑顔でハヤトを睨む。
「ね、姉さん⋯⋯笑顔怖いです」
ハヤトが青い顔をする。そして周囲はハヤトに青い顔をさせた私に引いている。
な、なんで、私が皆にそんな顔されるのよ! 解せぬっ!
「⋯⋯だが、これはチャンスでもある」
ビンセント・ミケランジュが不敵な笑みを浮かべた。
「ハヤトの言う話が事実なら、この社会の不条理を壊せるきっかけとなるからな」
「「「「!!!!!」」」」
ビンセント・ミケランジュの言葉に皆が理解したのか大きな反応を見せた。
それはそうだろう。『魔術士ランキング』で個人の優劣が決まるこの社会で、体内魔力が上級貴族に比べて著しく低い下級貴族や平民は上級貴族からいじめれたり、理不尽な横暴がまかり通っていたからだ。
おそらく下級貴族のビンセント・ミケランジュもそれを経験している一人なのだろう。というより、下級貴族や平民が多いこのD組の生徒であればほぼ全員がそのような経験をしているはずだ。
「お、おい、ビンセント! やめろ!」
「マルコ⋯⋯」
すると、マルコという生徒がビンセント・ミケランジュの話を止めようとした。
「ビンセント! お前のその言葉は⋯⋯⋯⋯この国を転覆させようとしている『叛逆者』ということになるぞ?! そうなれば、お前は犯罪者だ! わかっているのか!」
マルコという平民が下級とはいえ貴族のビンセント・ミケランジュに食ってかかった。言っていることは間違っていないが貴族に対してかなり失礼な態度である。いや、このクラスではそういった言葉や態度は容認されているのか?
とにかく、マルコの言っていることは正しい。ビンセント・ミケランジュの言葉はマルコの言う通り、国を転覆させようという意思が見られる言葉だ。
「ふん! いいか、マルコ。俺はこの国を転覆させようと思っているんじゃない。むしろ、逆だ。このままの力の統治など長くは続かないし、すでにその『歪み』は出ている!」
「!? ビ、ビンセント⋯⋯」
マルコはビンセントが反論すると思っていなかったのか、ビンセントの明確な意志を伴った力強い言葉に唖然としている。
「その『歪み』を正すには、このハヤトの力や事実は大きな力になる。これは『国家の転覆』ではなく『復興』だ、マルコ! そして、ハヤトはそのつもりで俺たちにこんな重要なことを話したんだろ?」
「⋯⋯ああ、そうだ」
「「「「!!!!!」」」」
ハヤトがビンセントの言葉を肯定したことに皆が驚く。
「これがお前の狙いなのか、ハヤト?」
ソフィア先生がハヤトに質問を投げかける。
「ああ、そうだ」
「まったく⋯⋯。お前、わかってるのか? 私はこの国の教師だぞ? そんな私によくもそんなことを話せるな?」
ソフィア先生がそう言ってハヤトを厳しい目で睨む。
「問題ない。ソフィア先生はこっち側の人間だと俺は知っているからな」
「!? お、お前⋯⋯私のことを⋯⋯?」
「ああ、知っている。だから、頼んだんだ、このクラスの副担任を」
「!! お、お前⋯⋯」
ソフィア先生が愕然とする。
「あと⋯⋯」
そう言って、ハヤトが今度はD組の生徒に体を向けた。
「D組の皆のこともすべて把握している。もっと言えばD組の生徒は全員、俺が選別した」
「「「「なっ⋯⋯?!」」」」
皆がハヤトの言葉に固まった。
「ちなみにその選別は俺と学院長である⋯⋯アリストファレス国王ジャンノアール・アリストファレスによるものだ」
ニッと笑うハヤトにこの場にいる者すべてが完全に固まった。
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