第19話010「不正?」
「ああ。それ、僕がやった」
「「「「国王様!」」」」
皆が跪く。
ていうか、国王様が認めちゃったよー。
「国王様、発言をよろしいでしょうか?」
「ん? いいよー。あと、他のみんなは普通に座ってていいからねー」
カルロ以外の私たちは一度腰を下ろし、カルロは国王様の許可を得たので立って話を始めた。
「国王様。失礼ながらどうしてこのハヤト・ヴァンデラスにそのような『優遇』を?」
「ああ、別に『優遇』ではないよ」
「で、ですが! 実際、彼の魔術士ランキングは『下級魔術士(ジュニアクラス)』ですよ?」
「うん、そうだね」
「それに魔力量も低いと聞きました。そうなると彼の本来のクラスはD組になるはず」
「そうだね」
「で、では! ハヤト・ヴァンデラスは⋯⋯」
「でもねー、ハヤトは僕を助けてくれた恩人でもあるんだー」
「お、恩人⋯⋯?」
「そう。僕が魔物に襲われた時に彼が助けてくれたんだけど、その時の魔物との戦いをこの目で見たんだよねー」
「!? ま、魔物と戦った?」
「何っ?!」
ざわざわざわざわざわざわ⋯⋯。
周囲の皆が国王様の言葉にざわつき始める。あと、以外にもあのクールなソフィア先生も動揺していたのだが、まあ、確かに現状、成人になった私たちは基本『魔物と戦ったことなどない』のだからソフィア先生でさえ驚くのも無理はない。
でも、おかしくない?
魔物と戦ったということもそうだけど、それ以上に『下級魔術士(ジュニアクラス)』のハヤトがどうして『S級魔術士(Sクラス)』の国王様を助けるなんてことになるの?!
私はそんな国王様の言葉に混乱していた。そしてそれは皆も同じなようで、無論カルロも国王様の言葉に唖然としていた。
「そう。だから、彼が『下級魔術士(ジュニアクラス)』だろうと『魔力量』が低かろうとA組に入るレベルに達していると思うよ。つまり『優遇』というよりも『特例』てとこかな?」
「こ、国王様が⋯⋯S級魔術士(Sクラス)の国王様が、そこの下級魔術士(ジュニアクラス)の者に助けられたなんて⋯⋯まったく意味が⋯⋯」
カルロが私と同じような理由で混乱していたその時、
「おい、国王様⋯⋯いい加減にしろ」
「「「「!!!!!!!!!!!」」」」
皆の視線が声のほうへと集まる。
「ハヤトー!」
「だから、そういうのが『ケンリョクランヨー』だっつーの」
視線の先には当事者であり我が弟ハヤト・ヴァンデラスが、周囲の空気を物ともせず仁王立ちで国王様にツッコミを入れた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「さっきから話を聞いてたが⋯⋯」
ハヤトの言葉に皆が耳を傾ける。
「俺はそんなこと何も知らなかったぞ。一体どういうことだ? 国王?」
ハ、ハヤト! 国王⋯⋯様でしょ!
「いや、だって、ハヤトだったら最低でもA組のレベルはあるじゃない?」
しかし、国王様はハヤトの言葉には特にツッコむ様子はなかった。あれはアリなんだ。
ていうか、今はそんなことを言っている場合じゃなかったわ。私は余計な事は考えずに二人の話に集中し直した。
「そんなことねーよ。俺はそいつの言う通り『下級魔術士(ジュニアクラス)』だ。だから、そいつの言う通りのルールなら俺はD組へ行く」
「え! ちょ、ちょっと、ハヤト! 本当にD組でいいの?」
「当たり前だ、馬鹿者。とにかく、その『ケンリョクランヨー』はもう金輪際やめろっ! あと、あんたはちゃんと仕事しろっ!」
「ぐすん⋯⋯わかったー」
ハヤトに正論でツッコまれヘコんでトボトボ帰っていく国王様。そして、そんな国王様に正論でツッコむ常識はずれのハヤト⋯⋯まさに昨日の入学式の再来である。
そんな常識はずれのハヤトは何事もなかったかのようにスタスタとD組のほうへと移動しようとする。
ていうか、
「ちょ、ちょっと! ハヤトーー!」
私は周りの目も気にせず咄嗟にハヤトを呼び止める。だって、あまりにも突然のことが起きているのに、あいつときたら平然とこの場から移動しようとするんだもん!
「すまんな、ティアラ。こればっかりはしょうがない。お昼はまた今度な」
「ハ、ハヤト⋯⋯」
そう言ってハヤトは、A組とは真逆の端のほうにいる『D組』の列の中へと入っていった。
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