第14話005「三年ぶりの再会」
「ちょ、ちょっと⋯⋯離して、ハヤト」
「む? すまん。つい、嬉しくて⋯⋯」
私はハヤトのあまりにも突然の抱擁に一瞬体が硬直したが何とか我に返る。
び、びっくりしたー!
こ、こここ、こいつ⋯⋯! いきなり抱きついて⋯⋯! し、しかも学校で⋯⋯!
でも、私も三年ぶりだったのでそのハヤトの態度は少し⋯⋯嬉しかった。
「ダ、ダメだよ、ハヤト。学校ではこういうことしちゃダメ!」
「そうなのか?」
「そうなの!」
「弟でもか?」
「弟でも!」
「む、わかった。次からは気をつける」
「⋯⋯」
さっきの会場でのハヤトの言動や行動を見ていたので、てっきり『傍若無人』な振る舞いをするかと思ったのに⋯⋯言葉はちょっと変わったけど、でも、ほとんど昔と変わらないじゃない。
「何?」
「ううん。会場のハヤトを見た時はだいぶ変わったかと思ったけど⋯⋯でも、今、話したらあまり変わっていないようで⋯⋯安心した!」
「別に何も変わっていないぞ?」
「ううん。ちょっと口調が変わってるよ」
「口調? そうなのか? あっちではクソババア⋯⋯師匠と二人だけだったから特にわからなかったけど⋯⋯あ! もしかしたらクラウスと『融合』したからかも⋯⋯」
「クラウス? クラウスってもしかしてあの⋯⋯魔王⋯⋯」
「しっ! この話は後でする」
「あ! わ、わかった」
「まあ、でも基本俺は何も変わってないから」
「うん、わかった」
そんな感じで私とハヤトは三年ぶりの対面を果たして、何事もなく教室に向かおうとしたが、
「ちょいとストップ⋯⋯」
「ん? 何だ?」
「あ、あんた⋯⋯! そう言えば何で国王様とあんなに親しげだったのよ!」
私はつい、ハヤトとの久しぶりの再会に嬉しくなって肝心な事を聞くのを忘れるところだった。
「ん? あー、いや、前にジャンと会ったときにさ⋯⋯なんか、向こうが俺のことを気に入ったみたいで⋯⋯それからはずっとあんな感じだ」
「いやいやいやいや、な、何があったのよ!」
「別に。まあ、長くなるからその話もまた今度話す。それより早く教室に行こう」
「ちょ、ちょっとー!」
そんなこんなで私とハヤトは教室へと向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「お、おい、今の奴は⋯⋯もしかして」
「は、はい。おそらく⋯⋯あの赤い髪の子はあの中等部の有名人だった『紅蓮の乙女(ブレイザーズ・メイデン)』⋯⋯ティアラ・ヴァンデラスかと」
「だ、だよな〜」
「あ、兄貴! あいつ、さっきティアラ・ヴァンデラスとの会話で『弟』って言って⋯⋯ましたよ?」
「あ、ああ、俺も気づいた。あいつの名前もハヤト・ヴァンデラスだしな⋯⋯つまり、そういうことなんだろう」
「と、とととと、ということはですよ! あ、あいつの親父さんは、あの⋯⋯王宮魔術士のオリヴァー・ヴァンデラスてことですよーーーっ!」
「だ、だよなぁ⋯⋯ハハ」
「「「⋯⋯⋯⋯」」」
三人がしばらく無言になる。
「き、聞かなかったことにしよう」
「「さ、賛成ー!」」
ライオットの『平和的解決策』に二人が秒で賛同したのは言うまでもない。
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