第8話008「ひとつの可能性」
「現国王はこれまでの国王の中でも突出した天才でな、七歳になる頃にはあらゆる分野の学問を学び尽くしていた」
「な、七歳で!? す、すごい⋯⋯」
「いいな〜」
「「⋯⋯」」
ティアラの呟きに俺とオリヴァーさんは無言の理解とため息を示す。
「そんなあらゆる学問を身につけた若き王は、特に『歴史』に興味を示していた」
「歴史に⋯⋯興味?」
「政治、経済、魔術、地政学⋯⋯あらゆる学問を学んだ王だからこそだったのかもしれないが、歴史に『腑に落ちない点』を見つけ出したんだ」
「え? それって⋯⋯」
「ああ。彼は天性の考察力で『歴史の闇』⋯⋯『ガイア戦記の真実』の欠片を見出した」
「「ええっ?!」」
「あの戦争から三百年も経過した今、『偽りの歴史』は学問からおとぎ話まで幅広く浸透している。その為、もうその『綻び』を見つけることはほぼ不可能なはずだった。にも関わらず、この若き王はその『綻び』を自力で見つけた」
「す、すごい⋯⋯」
「しかし、当初はあくまで『小さなきっかけ』に過ぎず、また、王宮内でも歴史に精通している者は皆無だった為、王は歴史の違和感を『自分の勘違いだろう』と思い、そこで一旦調べることをやめる」
「そ、そんな⋯⋯」
「しかし⋯⋯まあ、今思えば運命だったのだろう⋯⋯私とお師匠様が王宮魔術士としてこの国に赴任したのがちょうどそのタイミングだった」
「「おお!」」
俺とティアラのテンションが上がる。
「⋯⋯結果、王は私のお師匠様から『真実』を知ることになる。そして、真実を知った王は『私の代で嘘の歴史に終止符を打つ』ということを宣言し、お師匠様と私に協力するよう申し出た。無論、私たちも同じ想いだったので王に協力することを約束した」
「な、何だか、この国王様って⋯⋯すごいですね」
「ああ。まだ年齢は二十一歳と若いが聡明なお方だ」
「二十一⋯⋯そ、そんなに若いの!? あの⋯⋯え〜と、何だっけ⋯⋯?」
「⋯⋯おいおい、ティアラ。この国の王であり、私の上司だぞ?」
「ご、ごごごご、ごめんなさい〜〜!!」
ティアラが顔を紅潮させオリヴァーさんに平謝りする。
「アリストファレス王国第六十代国王⋯⋯『ジャンノアール・アリストファレス』様だ」
「ジャンノアール⋯⋯アリストファレス」
「そして、ここからがやっとハヤト君の話に繋がってくる」
「え⋯⋯」
「私たち三人の中で、この『真実の告発』の為の準備において、真っ先に優先すべきことが一つあった。それが⋯⋯君だ、ハヤト君」
「え?」
「具体的には⋯⋯『魔王クラウスの転生者の確保』が最優先事項だったんだ」
「ど、どうして?」
「魔王クラウスの魂は君の体の中にあり、その魂と転生者が一つになれば魔王クラウスの力がその転生者に受け継がれることになるからだ」
「ちょ、ちょっと待ってよ! それってつまり⋯⋯魔族の王に力を貸してもらうってこと?!」
ティアラが俺と同じ疑問をオリヴァーさんにぶつける。
「ああ、おそらく。理由は彼自身が事の真相を知りたいということと、もうひとつ⋯⋯魔王クラウスの妻の願いでもあるからだ」
「願い?」
ビクン!
『ほう⋯⋯、ようやく、まともに、話ができる者が、現れたようだな』
「「!?」」
突然、聞きなれない言葉で呟いた俺に二人が顔を向ける。
「あ、あなたは⋯⋯もしかして⋯⋯」
『いかにも。俺が、魔王クラウス、だ』
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