第5話 姫さま補正は非科学的である

 空裏と夢裏は、牢獄へやって来た。

 牢獄には、魔王の娘の古姫(こき)が閉じ込められていた。

 古姫は、愛するものを作ってしまったために、その罪で捕らわれて、牢獄に入れられたのだ。

『愛するものを作るな』というのは、魔王城の重要な戒律だった。

 誰かを愛してしまったら、魔王の娘でも許されない。

 古姫の罪は重い。

 古姫はきれいな娘だったが、魔王城では愛することは許されない。

 古姫は、牢獄へ転輪童子がやって来てくれるのを待っていた。なかなか転輪童子は牢獄へやって来ない。

「古姫、あなたが魔王の娘だというなら、魔王に会ったことがあるのだろう。魔王はどんな人なんだ」

 空裏が聞くと、古姫は答えた。

「悪我識魔王は、あたしに、世界の苦しみを増す使命を与えました。あたしは、一生をかけて世界の苦しみを増すのが仕事です。父はそういう人です」

 空裏と夢裏は、悪我識魔王がそこまであからさまな悪人なことにびっくりした。

「あなたは世界を苦しめるために何かしたのですか」

 空裏が聞くと、古姫が答えた。

「あたしは世界を苦しめるために転輪童子を愛しました。転輪童子は、あたしの愛で無駄な煩悩がわき、おそらく、二年間、苦しんで旅をしていたのでしょう」

 空裏は、古姫の母親は美人だったんだろうなあと考えた。

 夢裏は、転輪童子と古姫はできているのだろうか考えた。

 夢裏は、ぶしつけな質問をしてよいのかどうか考えたが、ここは質問して確認しなければならないと思った。

「転輪童子とは両想いなのですか」

 夢裏が聞くと、

「そうですよ」

 と、古姫は答えた。

 牢獄のかわいい姫に想われながら、二年間も城の中を旅した転輪童子は、魔王城の七不思議のひとつだ。

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