第2話 将来の夢は魔王より強い職業

 空裏の近所には、寺部屋の娘の夢裏(むり)がいた。

 空裏は昔からよく夢裏と遊んだ。

 空裏は、夢裏に、魔王城の探検をしようと持ち掛けた。

「魔王城の探検かあ。目的は何?」

 夢裏は聞いた。

 空裏は、賢者の裏釈迦(うらしゃか)を探すことだと答えた。

「あたしは、魔王より強い者に会いたいな」

 夢裏はいった。

 そして、空裏と夢裏は、賢者裏釈迦と魔王より強い者を探して、城の探検を始めた。


 毎日、毎日、空裏と夢裏は、まだ行ったことのない回廊や部屋に行って、どこに何があるのか自分たちのノートに地図を書いていった。

 飲食屋、衣服屋、寝具屋。

 装飾屋、音楽屋、雑貨屋。

 図書館、銀行、病院。

 広場、研究所、発電所。


 時々、住み込みで働けと勝手に雇用契約を押し付ける店屋とかがあった。

 空裏は格好いい服屋を好み、夢裏は音楽屋が好きだった。

「衣服屋の兄ちゃんって魔王より強いかな」

「無理だろ」

「音楽屋の兄ちゃんは」

「音楽でどうやって魔王と戦うんだよ」

「ええ、戦えるよ、音楽でも」

「そうかな」

「病院の医者とか。魔王だって病気になるだろうから、診察の隙をついて倒すとか」

「それはうまくいきそうだね」

「なら、魔王を倒すために、あたし、医者になろうかな」

 夢裏は、城の探検の中で将来の夢を語った。


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