第12話
私と兄はこのままこの家に住むことになった。
お葬式の時に会った本当の父親、その奥さんと子供、私は一生忘れない。恨みなんかは全くないし、いつでも幸せになってほしいと思う。けど、本当に父親なのかはこれからも実感なんてしない、してあげないと、そう思った。
母親が今まで何のために毎日働き続けたのか、この人に養育費や慰謝料、なにももらいたくなかったからだ。私達には非常に関係ない。とばっちりだ。
だけど、兄はこれからも受け取らないと言いはった。自分たちでなんとかすると。そのことを私は知らずに過ごしていた。
兄はお葬式の次の日までは私とずっと一緒にいたが次の日からは、バイトばかりだった。
私は2週間くらい学校を休んでいた。何も食べないし、眠ることもしない私を知ってるのはジョーだけだった。ジョーが毎日お菓子とかいろんなもの買って家に来る。ジョーのお母さんの作ったご飯は、食欲はなかったが申し訳なくて少しは食べていた。
ジョーが漫画持ってきて読んだり、DVDを借りて持って来たり、音楽きいたり、とりあえず毎日ジョーは学校が終わるとすぐに走って家にきてくれた。
一度だけ学校のことを聞いた。
「ジョー学校どんな感じ?」
「どんなって?」
「んーどうったいうか、、みんな元気?」
「当たり前じゃん、みんな元気だよ」
「昼休みはミカ達も一緒?」
「うん、一緒」
「明日学校行こうかな」
「行こうぜ。迎え来るし」
「うん」
「何も変わってねーから」
「うん」
俺は、あの日からなにもできないでいる。
足がうまく動かない、前に一歩踏み出せない、手をさしのばすこともできない。
ルイとジョーはあの日から、更に仲が良くなったというか、常に一緒にいる。
ジョーは優しいからいつもルイを気にかけて、そして俺の言いたいことを心の中ではなくしっかりと言葉にして伝える。そうやってルイを守っている。
なのに俺は、なにもできずに隣の席に座っている。見ていることしかできなかった。
そして今、現在。
21歳になった俺たちは偶然にも、また出会ってしまった。
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