第10話

俺はずっと信じられなかった。

昨日ルイに告白して浮かれてた。昨日、ルイと手を繋いで浮かれてた。

でも、ルイが泣いてる。ジョーの横で小さくなって震えてる。

俺はジョーに連絡をもらって病院に来ていた。病院につくまでにいろんなことを考えた。着いてすぐに病院を走りまわった。そしてすぐ見つけた。ルイを見てすぐに状況がわかった。

何年も前の自分を見ているみたいだった。俺はそこから動けなかった。そしてそのまま何も言えずに帰ってきた。

文化祭は何事もなかったかのように終わった。そして、俺たち以外、何事もなかったかのように日々を過ごしている。それは当たり前だけど、当たり前なことも今の俺には嫌気がさした。

次の日、ジョーは学校に来なかった。ミカとイクミとサヤカはルイの母親が亡くなったことを知り、その日の昼休みは4人で無言で過ごした。誰もなにも言わなかった。

隣の席は2週間以上座ってはくれなかった。

次の日は5人みんなで葬儀に出た。ジョー以外の俺たちはじっとその場に立っていることしかできなかった。ルイは空っぽのように見えた。いつものように6人でそこにいても、ルイはどこにもいなかった。ジョーの肩に隠れるように座っていたし、こっちを向くことはなかった。

何回も連絡しようと思った。電話もかけようか迷った。けど、なにもできなかった。

2週間が経ち、教室に着くと、隣にルイが座っていた。

「おはよう、タロウ」

「ルイ、、」

「ごめんね、」

「え?なにが、、」

「いや、連絡とかなんか、なにもしなくて、、」

「ううん、俺こそごめん」

「なんでタロウが」

「ルイ、後でさ、、」

「あ!ミカ達に会ってくるわ!」

急に明るくルイがそう言い立ち上がった。

「あ、うん」

なにを言っていいかもわからないし、なにをしたいかもわからなかった。

だけど、ルイを守ってあげたいと思った。そばにいたいと思った。でも、2週間もなにもしてあげれなかったし、動けなかった自分がひどく情けないし、恥ずかしいと思った。

ルイは、いつも授業中によく寝ていて、それを起こすのが俺の役目だったが、ルイは1度も居眠りをしなかった。ルイが遠くに見えた。隣にいるのに。

それからのルイは少しも暗いところを見せなかった。無理に明るくもしなかったけど、1度も悲しそうにしたり、俯いたりもしなかった。

でも、たまにぼーっとして、そして俺に触れたりする。それが俺を底の底まで落ちさせる。

そのまま冬休みに入り、今日は6人みんなでジョーの家でタコパをすることになっていた。

俺は、最近ジョーの母ちゃんとよく話す。落ち着きにくるというか、用もなくジョーの家に行き、ココアを入れてもらってずっとリビングに座ってる。今日もみんなが来るまでずっとジョーの母ちゃんがやってるカフェのカウンターにぼーっと座っていた。

「タロウ、あんた大丈夫?」

「え?なんで?」

「なんか悩みがあんのかね」

「まあね」

と言ってるうちにジョーが2階から俺を呼んでいた。そしてルイがミカと一緒に来て、イクミとサヤカも来た。ジョーの部屋に6人で集まるのはかなり久しぶりだった。


 私がタロウを好きになったのは多分、この時だった。

高校に入って半年がたったころ、6人でいることが当たり前になってきていた。それで、その記念にタコパをしようということになって、ジョーの家に6人が集まった。

ジョーの部屋のこたつにみんなが入る。ジョーが隣に座っていて、ミカがジョーの右斜め、私の目の前にはタロウ、その横にはサヤカ。私の←斜めにイクミ。ちょっと窮屈ながら、そこには収まっていた。ミカは仕切ってタコ焼きを焼いてくれる。ミカは顔も綺麗で面倒見もよくて、いつの間にかみんなのお姉さんみたいだ。いつも周りが見えてる気がする。私が男だったら絶対に好きになっていただろうと思うくらいだ。イクミは携帯ばっかりさわる。サヤカはジョーとミカのやりとりを羨ましそうに見ている。サヤカはきっとジョーのことがすきなんだ。でも、ミカには敵わないと諦めたはずが、やっぱり見てしまうってのがわかった。ジョーはきっとミカの気持ちを知らない、と思う。もったいないな。

私は、ミカが皿にのせてくれるたこ焼きをありがたく食べていた。

「ルイ、おいしい?」

「うん。めひゃくひゃおいひい」

ミカが聞いてきて、あつくて返事が気持ち悪い声になってみんなが笑った。

「ルイ、髪の毛食ってる」

目の前からタロウの手が伸び、髪の毛を優しく指で出し分けてくれた。

「ルイ、お前、なに赤くなってんだよ」

それを見てたジョーがすかさず言う。

「え、私赤い?」

「うん、すげー赤い」

「げ、、、」

イクミとサヤカが顔を見合わせて笑い、ミカが笑った。

「タロウに照れんなって」

「照れてないしー」

と言ったが、すごく顔が熱くて、心臓がドキドキした。

この時から、タロウの1つ1つに見惚れたり、心臓を鳴らすことが多くなった。


でも、そんなの誰にも言わないし、私だけのたのしみだったりした。

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