第7話
あいつはジョーのことがすきだ。何度か聞いたことがある。
俺がルイのことを好きなこともあいつは多分知っている。言ったことはないけど。
あいつはまだ告白もしていないし、告白するつもりもないという。俺もそうだ。
俺は、入学した時からルイのことが気になっていた。入学式が終わってみんな少しづつ周りの子たちと話したりしてるのに、ずっと1人でいる子がいた。綺麗な顔立ちで、1人だけ大人びてるというか、少し冷たさを感じる子だった。隣のクラスの子だったけど、ずっと目で追ってしまっていた。次の日、どうにか声を掛けようと思った。
でも次の日。親友がなぜかその子と一緒にいた。
俺の親友の名は日野 條という。名前もかっこいいし、顔も性格もかっこいい。
小学3年の頃うちの近所に越してきて、それから仲良くなり今でも一緒につるんでいる。
こいつん家は恵まれている。優しい母親がいて、頼もしい父親もいて、3つ上の兄は喧嘩も強くて弟思いだ。俺は憧れていた。こいつの家族にも、ジョーにも。
俺の母親が病気で死んでからは、いつもジョーの家でお世話になった。毎日いても何一つ嫌な顔せず、いつも家族同然のようにしてくれた。ジョーが怒られる時は俺も一緒に怒られた。
いつの間にか、俺用のお茶碗も箸も、マグカップすら置いてあるようになった。
中学生になるとジョーは一気にモテた。女の子が俺のことを利用する。
でも、それでもよかった。俺は全然悔しくもなかったし、僻みもなかった。
いつもジョーといるおかげで俺も女の子からモテることもあったから。
だけど、俺の好きになる人はいつもジョーと同じ人。好みが似ているのだ。そして俺は一度も好きな子とは付き合えない。ジョーが付き合うから。でも、それでもよかったんだ、今までは。
親友と一緒にいるのは俺が昨日見ていた子だ。
何度も目で追いかけ、今日どうにか話かけるはずの子。
昼休みになるとジョーがいなくなり、周りの子に聞いて隣のクラスに覗きに行くと、あの子と話していた。俺は、教室に戻った。
ジョーは昼休み中教室に戻ってこなかった。
ギリギリに戻ってくるとなんか嬉しそうな顔をしていた、気がする。
学校から出る時、2人で歩いていたらあの子がいた。俺はすぐに見つけたし、目で追った。こっちに来る。ジョーは気づいてなかった。
「ジョー」
「おお、ルイ」
「帰んの?部活しないんだ」
「しねえ。ルイも帰んの?」
「うん」
「一緒帰ろー」
「今日はいいや」
「なんでだよ」
「また明日ね」
「おう」
あの子が俺らと同じ方向に向かって歩いていくのを見ていた。
「アイツ、昨日友達になった」
「へえ~そうなんだ」
「友達いねえんだぜ、アイツ」
「へえ」
「1人で何個もごみ袋抱えててさ、冷たい目で俺を見下ろしてた」
「へえ、」
「興味ねっか~タロウは」
「いや、明日俺も友達になる」
「おう。俺が紹介するよ」
「いい。俺自分で行く」
「はあ~いいじゃんかよ」
「どっちでもいいけど」
そっけない俺の対応にジョーはどう思ったのだろう。
そしてあの子は、ジョーの隣にいた俺を覚えているだろうか。
次の日の朝もあの子を俺の方が先に見つけた。
「おはようジョー」
「おお、ルイおはよ」
「おはよう」
ジョーの横から覗き込んで言った。俺を見てにこっと笑った。
「おはよ」
「あ、こいつは俺の幼馴染。タロウって呼んでいいよ」
「お前が言うなよ」
「よろしく、私ルイっていうの」
「よろしく」
冷たそうだと思っていたが、全然違った。おっとりした話し方をする子だった。
お昼休憩になるとジョーは毎日ルイのところに行く。俺もついていくようになり、いつの間にか3人で昼休みを過ごすようになった。毎日。
学校がおわると俺はバイトに行かなければいけない。本当はもっと一緒にいたいけどバイトは高校に入ったらすると親父と姉貴と決めていたから。
ジョーとルイは放課後も一緒にいる。遊びに行ったり、お互いの家に行ったりしている。
俺も遊びたい。
梅雨に入るころには3人でいるのは当たり前になっていた。
6月、ジョーが風邪ひいて1週間学校を休んだ時、俺はルイのところに行くか迷って、行かなかった。弁当食べた後隣の教室を覗くと、ルイの周りに女の子達がいた。
「タロウ~」
窓際の奥の方からルイが手を振って、手招きしてる。
「タロウ、来るの遅いよーなんで来んのよ」
「ごめん、ジョー休みだから」
「なーんだジョー休みか、それでもでも来てよね」
「おう」
ルイが俺の腕をポンっと叩いて笑った。
「渡君、私ミカ。よろしく」
「よろしく」
荒木ミカ。学校中の誰もが知っている。美人でスタイルもよくて有名な子だ。
もう1人は、原いくみ。1学年上に彼氏がいて、天然キャラでルイの前の席。
あと1人、木下さやかは、ジョーのことが好きだ。荒木もジョーのことをすきなのを俺は知ってる。ルイもジョーのことが好きなのかな、とか考える。
次の日からは、4人で昼ご飯を食べた。最初は気まずかったけど、すぐに慣れた。ルイは嬉しそうだったし、帰り道に楽しいと言っていた。
「ミカがね、本当はジョーと仲良くなりたいって言ってた」
「正直だな、あいつ」
「うん、ミカもサヤカもジョーのことすきみたいだった」
「やっぱり、ジョーはモテるよな」
「モテるね、すごく」
「いいよな、選び放題じゃん」
「うん」
ああ、やっぱりルイはジョーのこと好きなのかな。
次の日の朝、学校の前でルイに会った。
「タロウ、おはよ」
「おはよ」
「今日もジョー休むって。タロウ今日バイト?」
「ああ、バイト」
「な~んだ、バイトか」
「なんで?」
「いや、いいよ」
「そっか」
「明日はバイトない」
「まじ?じゃあ明日開けといて」
次の日の放課後、ルイが俺のチャリの後ろから道案内をする。
着いたのはCDショップ。もう予約してると言って歩いて行く。ルイが止まった目の前のアーティストを見て俺は不覚にも笑ってしまった。
「ルイ、ホルモン好きなの?」
「うん、超好き」
「まじか。俺も超好き。ルイが好きなのは超意外」
「タロウも好きなの?まじ?」
「うん、俺もこないだこのCD買った」
「私、1人で買いにくるの恥ずかしくてさ」
「じゃあ今度から一緒に行こう」
「うん、行こ。仲間ができてよかった~」
ルイが嬉しそうで俺も楽しくなった。
それから、何度か授業中に屋上でさぼる時は一緒にホルモンを聞いた。
イヤフォンの音を爆音にして2人で笑いながら頭振ったこともあった。
また、ルイのことが好きになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます