第4話
「最初見た時にさ、ルイがごみに向かって‘‘くそっ‘‘て言ってんの見て笑えたんだ」
「なにそれ、ダサいじゃん」
「なんで声かけたんだろ」
「煙草吸ってるの見られたからとかw」
「あ~それもある」
「今日から友達な、って言われたw」
「え?俺そんなだせえこと言った?」
「言ったよ、だせえって思った」
「うるせえよww」
「でも、いいやつそうと思った」
「いいやつだったろ?」
「まあね、」
女友達も何人かできて、遊びにも行くようになった。ジョーと帰る時にその女友達も一緒に帰るようになった。ジョーは嫌だと言っていたが、だんだん仲良くなってるように見えた。
ジョーの幼馴染のタロウって子も仲良くなった。
よくみんなで遊ぶようになった。
ミカ、イクミ、サヤカ、タロウ、ジョー、私。
イクミは、私の前の席の女の子でなかよくなった。ミカとサヤカは多分ジョーのことがすきで私に近づいてきたと思う、最初は。でも今はすっかり仲良しになり、大事な友達になった。
高校2年生になった時に、ジョーとミカは一緒のクラスになり、サヤカは別のクラス、私は、タロウとイクミと同じクラス。
最初は帰り道は変わらず6人で帰っていたが、サヤカは同じクラスの子と一緒に居ることが増えたし、だんだんイクミも彼氏といることが増え、4人でいることが多くなった。
変わらないことは、休みの日はジョーは私の家にだいたい来ていた。これはずっと変わらなかった。ジョーの家とは結構近所で歩いて行ける。
いつもジョーは私のベッドの下に座る。そして靴下を脱ぎ、足を伸ばす。
私達はなんでも話す。今日会ったこと、誰かに連絡先を聞かれたとか、今日の気分とか、今日誰かに告白されたとか。
ジョーはモテるから何回も告白の話になる。けど、ジョーはいつも断っている。次付き合う子は真剣に決めるって。「俺はまだあの子のことはすきじゃない」とか言って。
私の兄はそれを聞いていつも大笑いしていた。ジョーが毎日うちに来るから兄にも紹介して3人で話すこともあったから。そしていつもそんなジョーに「モテるうちに遊んどけよ、いまのうちかもよ」って言っていた。それにジョーはいつも「いつになってもモテるもん」とか言ってた。今日もそうやって3人で話していた。
私の家族は普通ではない。お父さんは気づいたころにはもういなかったし、お母さんは仕事しかしない人で、家にいる時はほとんどがお酒を飲み、酔っ払うと口が悪くなり、ヒステリックを起こす人、こんな家族だからか、兄はすごく優しくて出来る人だった。そんな兄が私はすごく大好きだし、ジョーもすごく尊敬してると言ってた。
今日もいつもと一緒だと思ってた。
けど違った。
リビングで3人でご飯を食べていたら、母がベロベロになって帰ってきた。ジョーはこんな母を見るのは初めてだった。いつものようにジョーは「こんばんは、今日もお邪魔してます」と言った。「ああ、ジョー。今日もルイのこともてあそびに来てたのね。はははは」大きな声でへらへらと笑いながらそう言った。
「お母さん、何言ってんの。」
「あら~違った?ごめんごめん~」
「ふざけんな」
「お母さんに向かってそんなこと言うのね。ルイはジョーのことすきなのね~。でもね、ジョーは違うのよ、ルイ。男はそういうもんなのよ」
「違うわよ!!」
「そうよ!!!!男は女のことなんか大事にできないし、きっとすぐ捨てちゃうのよ」
「酔っ払ってるし、ジョーごめん」
涙が溢れて止まらない。ジョーに向かって言った。
「いや、あんたが謝ることないのよルイ」
「なんでよ、なんでそういう風に言うの」
「男だからよ。こわいものよ男はほんとに」
「最低ね、何も知らないくせに!自分がそうやってお父さんにも捨てらたんでしょ!」
私はお母さんの頬を平手打ちした。大事な友達にひどいことを言い、最低、最低最低。
ジョーのことを可愛がってたのに、本心ではそう思っていたのかと思ったら悔しくてたまらなかった。
無意識に手が出てしまった。すごく後悔したのに、その後悔も一瞬で消えた。
母が豹変した。お酒を飲むといつもヒステリックになり、ひどい言葉を言ってくるだけだが、今日はそれだけじゃなかった。私が手を出したせいで母は怒りに変わり、私を床に突き倒して髪の毛を強く引っ張りあげ、私を睨み、何度も私の頬を叩いた。私は目の前の人が誰なのかもわからなくなる程涙が溢れていて、何度も叩かれる頬が痛いせいか周りの音すら聞こえなかった。兄が泣きながら母を突き飛ばしたのだけは見えた。
「てめえ、誰に手出してんだよクソばばあ。」
かなり声が震えていた。兄は涙をたくさん流しながら台所に行き、母に水を渡した。
私は、涙が溢れて声にならない声で泣いていた。ジョーは私を抱えて部屋のベッドの上に降ろした。ジョーは私の頭を胸に引き寄せた。
泣き止まない私がジョーに何度も謝り、謝るたびに悔しさと恥ずかしさで涙がまた溢れる。
「ジョー、ごめんね。ごめんね。ごめんね。」
ジョーが私の背中を擦り、ゆっくり抱き寄せて離さなかった。
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