第12話 2020年4月9日 もう限界

 日曜日。ママとお兄ちゃんが唯一一緒にいてくれる日。

 私は、母と、家の断捨離をする予定だった。

 母は、3階、私は、4階で断捨離をするはずだった。


 しかし、私はもうそれどころではなかった。

「また、平日になったらやられてしまう。」

「平日になるのがいやだ。」

「そうくんもいるのに、なんでこんなことされなきゃいけないの?」

とずっと思っていた。


「I先生あかりもう頑張ったよ。」

「あかりちゃんたくさん頑張った。」

「たくさん我慢した。」

「もう限界だよ。」

「助けてお兄ちゃん。」

「助けてママ。」

「誰か助けて。」

「もう限界。」


私は、ずっとこの言葉を繰り返し言っていた。

もうすでに解離状態だった。

体は、固まっていた。

これは、自身を守るための一つの体の反応だった。



お昼になって、様子を見に来た母は、

「あかり?どうしたの?どうしたあかり。。頑張ったね。 あかりちゃん勉強たくさん編入のために頑張ったね。」

「違うの。」

「ママ気づいてあげられなくてごめんね。」

「違うの、ママは悪くないの。。」

「どうしたの?言ってごらん。」

「言えない。」

私は、こんな状態でも、家族がバラバラになるのがいやだったため、言えなかった。


そして、父は、私が中学校の時にやっていた野球チームに手伝いにいたので、母が父に電話をした。


「あかりが前の状態と一緒なの。病院連れて行こう。」

父は、

「わかった。すぐに向かう。」

そう言って、父が自宅に来た。


私は、「もう父の顔なんか見たくない。近寄るな。もう来ないで。」

と心のなかで思っていた。


しかし、父はそんなことを思っている私のことなど知らずに、車で自宅に帰ってきた。そして、助手席に私を乗せると、父は私の手を握ってきた。

私は、気持ち悪かったため、小指だけにぎってやった。


 そして、武蔵野病院についた。


私は、父と母が目の前でいる中では、主治医の先生に話すことができなかった。



 2020年4月9日 私は、診察の結果、入院することになった。



入退して、まず、看護師さんに打ち明けた。

看護師さんは、

「辛かったね。よく頑張ったね。」

と、背中をさすってくれた。


その後、主治医の先生とも話し、

「それは、犯罪です。少しずつですが、対応を病院側も考えます。」

と、言ってくださった。


私は、安心と同時に、もう家族がもとに戻ることはないんだとわかった。





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