聖霊の光

『彼女の幸せの為ならば何万、 何億の人間が死んでも悔いは無い』


ヴォルフガングの強い意志に気圧されるバルド。


『君には有るのか? 愛する者の為に全てを犠牲にする覚悟が?』

「・・・僕には貴方の様な覚悟は無い

だけどここで負ける訳には行かない」

『ならば如何する? 君は僕の、 聖霊の中に取り込まれているんだ

成す術は無い、 君はここで一人如何する事も出来ないだろう』

『否』


声が響く。


『私が傍に居る』

「・・・・・そうだね、 君が居たよ」

『・・・・・何を言ってるんだ?』


ヴォルフガングが困惑する、 如何やらもう一人の声は聞こえない様だ。


「さぁ行くよ」

『あぁ』


バルドがエッグヴィーナスを構える。


『今更スシブレードで如何するつもりだ? この世界を壊せると?

僕の心を砕けると思っているのか?』

「3, 2, 1、 へいらっしゃい!!」


エッグヴィーナスが射出される、 そして輝き始める。


『こ、 これはまさか!!』

「そう聖霊だ!!」


バルドが聖霊を使うのは切欠が有った。

それはバルドが現在居る空間、 ヴォルフガングが造り出した

内的な精神世界、 彼の心象である。

その空間に入る事によりバルドは肉体の束縛から離れ

スシの声を聞き易くなり、 寿司と心を通わせ聖霊を呼び出すと言う事である。

ヴォルフガングと言う聖霊の使い手と出会う事で聖霊の使い方

呼び出し方を無意識に学んだ事も大きかった。


『さぁせぇるぅかぁ!!』


絶叫しながら心象をブチ破って聖霊と融合したヴォルフガングが現れた。


「ヴォルフガング、 君を倒して僕は先に進む!!

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


輝きながら回転するエッグヴィーナス。

そして現れる輝く男、 彼こそがエッグヴィーナスの聖霊である。


ヴォルフガングが拳を振り上げる。

エッグヴィーナスの聖霊がその拳を受け止めカウンターで拳を叩き込む。


『ぐあ・・・あ・・・ああああああああああああああああああ!!!』


聖霊の肉体が溶け始め気化しヴォルフガングの体が徐々に見え始める。


「哀れなスシの暗黒卿よ、 恋人の所へ行くが良い」

『・・・・・彼女は僕を許してくれるだろうか・・・』

「知らないよ、 それは君と彼女の問題だ」

『・・・・・・・・・・・』


ヴォルフガングの体も消滅し、 心象も砕けた。

真っ暗な空間に取り残されるバルドとエッグヴィーナス。


『・・・行くぞ』


エッグヴィーナスの聖霊が呟く。


「あぁ!!」


聖霊が飛び立ち空中に向けて拳を突き出した。

空中に罅が入り砕け散る、 その後を追うバルド。

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