サイとレボ


「納得が行かない!!」


ドンと自室でテーブルを叩くサイ。


「聖女の娘であり剣術の達人である私が

何でこんな謹慎なんて受けないといけないのよ!!」

「お嬢、 あんまり暴れんでくださいよ」


大柄で痩身のサイの執事のレボがボケーとしながら言う。


「レボ!! アンタも主がこんな事になっているのに何とも思わないの!?」

「うーーーーーーーーーーん・・・・・」


ぐぅうう、 とレボの腹が鳴る。


「むつかしい事考えると腹減りますなぁ・・・」

「このおバカ!!」


レボにクッションを投げるサイ。

クッションを受け止めるレボ。


「兎に角お嬢、 母君がお亡くなりになったんだし

これからは母君の死後年金で食い繋いでいきましょうよ」

「死後年金だぁ!? 何言ってんのよ!!」

「教会の制度で戦死した者の遺族が受け取れるお金で」

「そういう事を聞いているんじゃない!!」


レボの声に激昂するサイ。


「このまま負け犬としての生涯を送れと言うの!?」

「負け犬所か勝ち組だと思いますよ、 一生分の飯には困らないんですし」

「そういう事を言ってるんじゃない!!」


ドンと机を叩くサイ。


「この私の剣術の冴えを忘れたか!?」

「いやいやお嬢の剣術は凄いですよ、 俺みたいな素人でもこう思いますもん

『すごいなぁ』って」

「馬鹿にしているのか!?」

「何でぇ?」


レボは泣きそうになる。

自分は褒めているのに何でこの人は怒っているのか分からない。


「・・・・・」


サイはレボの馬鹿さ加減にあほらしくなって怒るのを止めた。


「はぁ・・・」


思えば自分の従者は今やこの馬鹿で大食いの執事のみ。

母に仕えていた者達はサイを嫌悪、 酷い者に至っては憎悪している。

レボは他の従者よりも無能だったからこそサイから離れられずにいる。


サイは自身の行動で母を死なせたのは悪いと思っている。

だからこそ挽回の機会を得なければ、 とサイは目論んでいる。


「あのスシブレーダーとか言う奴等を何とかしなければ・・・」

「良い人だと思いますよ、 食べ物くれますし」

「知らない人から食べ物を貰うんじゃありません」

「うーーーーーーーーーーーん、 でもお嬢、 お嬢じゃスシブレーダーには勝てないですよ

前にも負けたじゃないですか」

「痛い所を突く・・・でも敵はスシブレーダーよ

そして・・・・・・・ズロ・・・」


遠い目をするサイ。


「お嬢?」

「・・・・・何でもないわ、 兎も角何か策を考えなさい!!」

「うーーーーーーーーーーん・・・・・」


ぐぅうう、 とレボの腹が鳴る。


「むつかしい事考えると腹減りますなぁ・・・何か食べません?」

「このおバカ!!」


癇癪を起すサイ。


「でも実際俺は何も出来ないッスよ、 お嬢が考え付く事は俺には全く分かりません

強いて言うなら俺はめっちゃ音楽が上手」

「全く役に立たないスキルの提示をありがとう」


頭を抱えるサイ。


「まぁ何ですかな、 お嬢はマジで強いのにスシブレーダーはそれより強いってズルっすよね」

「・・・・・それに関しては私の修行不足ね・・・

そうよ、 修行よ!!」


サイは立ち上がる。


「武者修行に行くわ!!」

「むしゃむしゃしゅぎょう? 何か食べるんです?」

「おバカ!! 良い!? 経験を積んで強くなるのよ!!」

「うーーーーーーーーーーん・・・・・」


ぐぅうう、 とレボの腹が鳴る。


「良く分からんすけど、 俺も行くんすか?」

「足手まといは要らないわ!! アンタはここで適当にオルガンでも弾いてなさい!!」

「はーい」


外に出ようとするサイだったが警備に止められる。


「お嬢、 修行は謹慎が終わってからにしましょうよ」

「ぐぬぬ・・・」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る