【Web版】竜帝さまの専属薬師(試し読み)

藤浪保

第1話 りゅーてーさまとのやくそく

「りゅーてーさま、りゅーてーさま、きれいなお花を見つけたの」

「また勝手に薬草園に行ったのか」

「だってね、これはね、りゅーてーさまをお守りするためのお花なんだよ」

「薬は毒にもなる。近づくなと言われただろう」

「お母さんにはひみつにして!」

「駄目だ。悪い子にはお仕置きが必要だ」

「りゅーてーさまのばかっ!」

「……このわたしにそんな口をくのはお前だけだよ、沙羅」

「やった! さらだけ! とくべつ!」




「りゅーてーさま、りゅーてーさま、おせなかにのせてください」

沙羅さら、お前は本当に空が好きだな」

「うん、さら、りゅーてーさまのおせなかすき!」

「背中ではなくて空と言ったんだが。まあいい。隣の山までだぞ」

「わぁい!」




「沙羅、ここにいたのか」

「りゅーてーさまあぁぁぁぁっ、うえぇっ、ふえぇぇぇ」

「一人で山には入ってはいけないと言われただろう」

「だってぇっ、だってね……ぐずっ……お母さんが、りゅーてーさまのおくすりが、少なくなったって……うえぇっ……言うからぁぁぁぁっ」

「大丈夫だ、沙羅。心配しなくても筆頭薬師がわたしの薬を切らすわけがない。全くどうやってここまで来たんだ」

「うぐっ……さらが、さらがりゅーてーさまをっ、まもる、んだもん」

「そうだな。もう少し大きくなったら頼むぞ」




「りゅーてーさま、りゅーてーさま、およめさんをさがしてるってほんとう?」

「ああそうだ。ずっと昔に約束したんだ。この国を守る代わりに嫁をもらうとな。やがて生まれる魂の片割れをわたしは心待ちにしている」

「かたわれってなあに?」

「わたしの唯一無二の存在だ」

「ゆいいつむにってなあに?」

「一番特別という意味だ」

「りゅーてーさまは、前にさらのこととくべつだって言ってた!」

「沙羅とつがいになったら、毎日さぞかし賑やかになるだろうな」

「つがいってなあに?」

「結婚するという意味だ」

「かたわれだとけっこんするの?」

「そうだ」

「じゃあ、さらがりゅーてーさまのかたわれになってあげる!」

「沙羅が大きくなったら考えよう」

「ぜったいだよ! やくそく!」

「約束だ」

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