第1話 魔法が存在する世界

 急に周りを囲っていた暗闇が晴れ、周りが明るくなる。


 まず目に飛び込んできたのは見当た事のないぐらい高くて、そして真っ白なドーム状の天井だった。


 ツバサがゆっくり周りを見渡す。どうやら自分たちは多くの武装をした人たちに囲まれているらしい。展開が急すぎて頭が追い付いていないため、竜也たちもツバサと同じように呆然と周りを眺めていた。



 武装をした人たち、と言っても軍隊が持っているライフルのようなものではなく、皆、銀色や金色の鎧を纏い、胸の高さまで行くか行かないかぐらいの長さの剣を持っている。



 建物はギリシャのパンテオン神殿のような内装の真ん中にレッドカーペットが敷かれていて、その先を目で追っていくと、少し高く設定された壇の上の玉座のようなものにひげの長い老人と、まるで作り物であるかのようにきれいな顔立ちをした銀髪の女性が座っていた。



 素人から見ても只者ではないとわかる雰囲気を漂わせるその女性は、まるで中世ヨーロッパの貴族が切るようなドレスを着ていて、右手には金色のリングがたくさんくっついている杖のようなものを持っている。



(とりあえず落ち着け、俺。多分思っている通りだけどまずは様子を見よう)



 そうやって、もはや自分ではないかのように鼓動する心臓を必死に落ち着かせようとする。この時点でツバサはいろいろと察していたし、この後の展開も何となく想像できたが、これは緊張しているからだろうか、それとも期待によるものだろうか、心臓が収まることはなかった。



 すると、銀の髪の女性がゆっくりとこちらに近づき胸に手を当てて体を少し傾ける。



 ツバサはそれを礼だと受け取り、軽く会釈をすると三人もツバサにならって同じことをする。



 そして少し微笑んでその女性はこういった。



「ようこそ、異界の勇者様。ぜひ私たちの世界をお救い下さい」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 そこからはツバサが基本的に会話に対応していた。もともとこの手の小説が好きだったのと、あまり冷静さは失わない性格であったので、三人に説明したりしているうちにツバサが代表みたいになってしまっていた。



 どうやらその人の話によると、この世界の名は「パラレント」というらしく、そこにツバサたちは召喚されたようだ。



 言語が通じているのは不思議で仕方がないが、そこはひとまず置いておくとして、ほかにも何個か妙なことがある。


 しかしそれらはすべて地球と大きく異なるが原因だった。



 それは・・・



「まさかテンプレ通りの魔法とファンタジーの世界だったとはな・・・」



 そう、この世界、パラレントでは魔術なるものが存在し、それらは個人の持つ「能力アビリティ」によって使えるものが決まってくるらしい。



 だから例えばこの宮殿には蛍光灯が存在していないのに明るい。これは「聖魔術」というアビリティを持つ人が使える「聖光」という魔術で、明るくするほかに魔人族にはダメージが入る、といういかにも聖魔術って感じの魔術だった。



 ちなみにこの異世界をつなげることができるのも聖魔術の分野らしいのだが、信徒たちが信仰している女神さまに祈りを捧げ、力を借りて行うものなのでどちらかというと儀式のようなものなのだとか。



 「人族」は長年、魔人族と戦争状態にあり、争いが活発化してきたので切り札たる「勇者召喚」を行い、一気にこの争いを終結させようとしているらしい。



 そんな話を急に神殿のような大広間でされてもついていけるわけもなく、普段はクールな樹もキョロキョロ周りを見たり、文月はなぜかツバサのそばから離れようとしなかった。



 一方竜也は意外と真剣にこの話を聞いており、ツバサは少し感心していたのだが・・・



「よっしゃ!そんならこの世界を救ってやろうせ!」



 と急に竜也が声を上げる。



(あーそうだ忘れてた。こいつバカなんだった)



 早くも竜也が結論を出してしまいそうになっている。



 そこで、文月はともかく、なだめ役の樹にはそろそろ戦線復帰をしてもらいたと思っていたツバサは、少し会話をして時間を作ろう、と質問を投げかける。



「僕たち、戦闘経験どころか武器すらも持ったことないんで、戦力にはならないと思いますよ。まさかこのまま戦えっていうわけじゃないでしょ?」



「確かにそうね、聞いた話だとよっぽどその魔人族ってのは強いんでしょう。 私たちは多分一般の人よりも戦闘力は低いわね。私たちを呼んでもあなたたちにはメリットがないわ」


 

すぐに樹がかぶせてきた。どうやら樹もだんだんと追い付てきたらしい。



「ええ、もちろん。しかし、この勇者召喚には少し特別なことが可能でして、この魔術は女神さまに干渉してもらってあなた方が世界をが渡る際に強力な「能力」を付与してもらうのです」



(・・・待ってました!!)



 ツバサは心の中でガッツポーズをとる。かれは現代日本のいわゆるオタクなのだ。この手の話で心躍らないはずがない。



「でもさ・・・私達って帰れるの??」



 ここでようやく文月が口を開いたが、ツバサは険しい顔をする。大体こういう場合は帰れないのが世の常だ。



「ええ、帰れますよ。まだゲートは開いていますからね。あなたたちはまだ故郷の世界とつながっているので簡単に戻ることができます。なので帰るかどうかは自分の与えられた「能力」を鑑定してからでも遅くはありませんよ?」



 どうやら親切に教えてくれた当たり、よくある「結局黒幕は人間でした」的な奴は避けられそうである。



 そして間もなく「鑑定士」が到着した。すごいよぼよぼのおじいさんだった。して、鑑定結果は次のようになった。











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