初めての戦場
本当に最低限の戦い方を教えられ、初めて握る真剣を持って、王都から程近い場所に俺達は陣取った。
砦も何もないだだっ広い平野。
本当に簡易的な戦国時代の挿絵で見たことのある、木造の障壁。
こんな物がどれだけ通用するのか。
アーダルベルトが馬に乗り、兵士達を鼓舞する。
「勇敢なるフォルキア兵士諸君。諸君らも現状況を十分に理解しているだろう。見よ! あの迫って来る醜いモンスター共を! その多くがゴブリンや異形のモンスター共。諸君らは想像できるか? あのような化け物が我らが王都に侵入する様を! 大切な家族、恋人、友人が蹂躙される様を! それを甘受できるか? 否、断じて否である。我らの兵力はあれらよりも少ない。だが、姫様の英断により、神は我らに奇跡をもたらされた。勇者様がこの世界に召喚されたのだ」
アーダルベルトは目配りして、俺を前に出させる。
ハッキリ言おう。
かつてない程緊張している。
そして、馬に乗るなど初めてで、上手く扱えないし怖い。
馬を引いてくれている人はいるけど、落馬するんじゃないかと冷や冷やしていた。
「勇者様のお力は私自身が体験した。私など比べ物にならないお力を持っている」
ざわざわざわ。
当たり前だが、王の間にいた兵士などほんの少数しかおらず、ほとんどが俺がアーダルベルトを吹っ飛ばしたなんて知らない。
こんな細身の俺が本当に強いのか、信じられないのも無理もない。
つーか俺自身まだ信じられん。
「白夜殿、打ち合わせ通りに」
小声でアーダルベルトはさっき決めた台詞を言えと促す。
俺に長々と演説をさせるつもりは流石にないらしい。勿論あっても困る。喋れば喋る程ボロがでるのは分かり切っているからだ。
俺の言うのはただ一つ。
剣を高々とかかげ叫ぶ。
「勝利を!!」
「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」
兵士達は吼え、士気は高まった。
同時にそれが開戦の合図となった。
千の軍勢が俺達に向かって殺到してきた。
「う、ううぅ」
怖い怖い怖い。
気持ち悪い千の異形のモンスター達が向かってくる。
この恐怖に比べればもうゾンビ映画なんて怖くないぞ。
「放てぇ!!」
アーダルベルトの声に従い、弓兵や魔法兵が遠距離攻撃を行う。
モンスターの中に遠距離攻撃できる奴はいないのか、成すすべなく攻撃をくらい、数を減らしていった。
このままいけるんじゃないか? そんな淡い期待を抱いていたが、そう上手く事は運ばなかった。
モンスター達はお構いなしに突っ込んでくる。
簡易な木造防波堤をブチ破ろうとしたが、これにもちょっとした細工がしてある。
前方から壊そうとすると、足物から槍がとび出し、壊したモンスターを下から串刺しにするエグイもので、多くのモンスターがこの餌食になった。
前がコケれば後ろもコケる。
そこを狙って長柄の槍を持った兵士達がモンスター達を突きまくった。
ああ、何となくだけど、昔の戦って感じがするな。
そんな中、何匹かのゴブリンが跳躍した。
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