妹はさびしいようだ

僕は杏菜の隣、妹の斜め向かいに座った。


「明奈。どうしてこれを読もうと思った?」


「……あのね。うちってあんまり本ないじゃん」


「ないな」


 正確には図鑑とかはある。少し物語もある。ただそれは妹はきっと読み飽きているはず。


 僕の部屋にはマンガとラノベがたくさんある。他の本もある。小三にはまだ見せない方がいいやつな。


 妹もマンガは持ってる。しかも結構ある。


 だけど、音読に適したものがあるかといえばない。


「だからネットで探したよ」


「どうしてそこでさらに音読に適さないのを選んだんだ……」


「私は初めはね、ネットで音読にいいなっていう話を探そうとしたんだよ」


「そうだったのかよ」


どこで間違えてしまった。幼馴染ざまぁが流行ってたのがいけないのか。


「でね、私は恋愛ものが好きだなぁって思ったから、恋愛もののなかで、ランキング上の方で、R15って書いてないやつを見てみたんだよ」


「おお……」


 しかし、妹が思っているものと、なろうにおける「現実世界・恋愛」の人気作品は多分だいぶ違う。違うんだが……それは読めば気づくと思うが……。


「それでみてみたら、幼馴染と主人公が絶交しててね。それで、こんな風になればいいなぁって思ったよ」


「は? 僕と杏菜が?」


「……うん」


 妹は静かに、唇を結んだままうなずいた。うつむいた妹。沈黙の中、妹がまばたきをしてまつ毛が動く。


 どういうことだろう。


 何もわからず、ただ黙って妹を見て、そしてまだ突っ伏している杏菜の方に視線が行きかけた時、妹は言った。


「だって最近、私さびしいんだもん」

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