妹の音読の威力が強すぎたみたいだ

「杏菜? 体調悪いか、あ、眠いかもしかして」


 僕はリビングに戻り、杏菜に慌てて訊いた。


「ちがうよ……」


 杏菜はかろうじて返事をしてくれた。


 でもな、ジェットコースターマジで苦手な人が頑張って乗ってみた結果みたいになってるからな。心配だ。


「ふふふ、お兄ちゃん。これは私の音読の威力が強すぎたからだよ」


 ドヤ顔を姿勢とともに完璧に維持している僕の妹。


 ていうか音読に威力とかあるの?


 音読カードの評価項目には、声の大きさ、すらすら読めたか、心をこめたか、とかしかないけど。


 僕が意味不明っていう雰囲気を出しまくっていると、


「私の音読の内容に威力があった」


 と、妹は僕に紙の束を見せてくれた。


 妹はR15でないのを印刷したらしい。多分童話か何かのランキング上位の作品なんだろう。


 と思いながら、読み始めると、衝撃の事実。


 この話、実は性格悪い幼馴染が、ざまぁされてるじゃんかよ。


 主人公と幼馴染の関係が、なろう小説らしい展開の早さでもってあっという間に崩れる。


「これを、主人公の名前を万太にして、幼馴染の名前を杏菜にして音読したよ」


 高等テクニック音読すぎる!


 そもそもなんでこの小説はR15じゃない? 幼馴染のおっぱいの描写がないのか本当に。


 ちなみにこのタイミングで言及する必要はない気がするが、杏菜はやや小柄なのに、こちょこちょしたくなるくらいエロい体型をしてる。胸は僕にとってちょうど好みなくらいでかくて、はい完璧幼馴染。


 ……話戻す。そうそう、なぜ小三が、色々難しい漢字が混じったのを一発で音読できるんだ?


 小三で習う漢字はまだ限られてるよな。


「なぜ漢字がそんなに読めるんだ?」


「えりかちゃんが教えてくれたよ。えりかちゃんは小学六年生の漢字まで進んでもっと先も少しやってるよ」


 優秀な友達だな……。そのえりかちゃんのおかげで妹は漢字を覚えたのな。よかったな。そうか。漢字の知識を活かして威力のある音読を披露したんだな。


 状況はおっぱいがおっぱいだというくらいによくわかった。あんまりわかってなさそう。


 なんにせよ、僕がやることは、杏菜のメンタル回復に向けて頑張ることと、なぜこれを音読したくなったのか、妹から話を聞くことだ。

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