心静かに私は行こう 神よ 貴方の平和の裡に

藍色夜空に降れる 沢山の微笑みに

私は 微睡まずには いられない

魂は 永遠の安らぎの 中にあり

最早何を 疑うこともない


夜の帳が 落ちるが如く

嘗て神殿に 垂れ下がっていた幕

星に境は無く 肌の色に境も無く

しかしてその心に 境がある


貴方の姿に惑わされ

太陽と大地と海とを 創った方を忘れ

「たった一人の 神を巡って 血を流せ

さすれば神は 魂を覚える」と 思われて


嗚呼 共に苦しむ神よ 我が贖い主よ

貴方の嘆きは 一体如何ほど

苦しむために 生まれ落ちた御子みこ

貴方の苦しみを 忘れた者は幸いなる者


彼等は断罪すべしと 我が罪を知っているから

貴方のご計画に携わった

誰もが貴方の お役に立ちたかった

しかし命は捨てられても 恐怖を捨てる事は


背教者と 呼ばれる勇気は 無かった彼等に

神を信じ 蔑まれる道を 選ばなかった彼等に

神を愛し 

冒涜される信仰を 持てなかった彼等のために


私は祈りましょう

全ての罪人の頭は 使徒ぱうろではなく 私である

全ての民の 憎悪を受くべきは 私である

嗚呼神よ 感謝します


私は誰にもまして 罪深い 故

私が救われるのならば 誰もが救われ

私が救われなくても 誰もが救われ

その確信の根拠に 私の罪在れ


我が罪は 我が榮光を頌えよ

我が屍は 血と水をを 湛よ

我が学びは 傲慢の罪を讃えよ

我が行いは 人の世の業を 称えよ


最早王国は 開かれた

擬人も罪人も 等しくなった

神の前に 平等なる 者達は

赦す過去を忘れ 一つになった


心静かに 私は微睡み

脈打つ所に憩う そこは貴方の腕にあり

時空の終わりと始まりは閉じ

私の目は全て 見届ける 現在 過去 未来


心静かに 私は憩う

この世も ここではない世も 人の思い当たる

その全ての時空を 神は愛される

その全ての時空の 罪人を 私が招こう


イスラエルせかいよ 神を誉め

シオンの山ふるさとよ 神を想え

コラジンの町だらくのとしよ 神を思い出せ

カナンの地やくそくされたらくえんよ 今こそ来たりて 光を示せ


心静かに 私は呼ぶ 神に見捨てられた人々を

心静かに 私は呼ぶ 神を見放した人々を

心静かに 私は呼ぶ 神の救いから降りた人を

心激しく 私は叫ぶ 神の救いに絶望した人を


神は要る そしてる 我が主人がそうだ

神は泣く 声高く泣く 我が主人が泣いた

神は綻ぶ その隙間から 全ての命を拾うから

神は嘆く 母親が乳を吸わぬ子を 危ぶむなら

慈愛を取りなそう 絶えることのない 営みに

繁栄を取りなそう 絶えることのない 愛憎に

歓喜を取りなそう 絶えることのない 終焉に

そして神は言うであろう 「全て良し」


世界を創った 時のように 言うでだろう

乙女が身ごもり 応えたが如く 言うだろう

御子が苦しみ 捧げられたが如く 言うだろう

終末おわりが来て 驚く人々を愛すため 言うだろう


嗚呼 もう来たのか 輝けるせれね

まだこの嘴は 賛美を囀れる が しかして

眠りひゅぷのすの息吹が 我らを包むなら 床に伏せ

おねいろすが異なる国の 楽園へ連れるのを待って


そしてその国を称えよ

遙かな海山隔て 我らを憩わせる 霊なるもの

もるふぇうす いけろす そして供物ふぁんたそす

異人の我らを招きたまえり 御使い達よ

嗚呼 眠らねば

神の設えた 楽園の使者が

客人を持て成す準備を整えた 御使い達が

我らが共に 食卓を囲むのを 待っているから


眠れ 眠れ まなこを閉じ

眠れ 眠れ 死者ではなく 生者のように

眠れ 眠れ 明日を煩う 事はない

眠れ 眠れ 万物は皆 招かれて久しい


心静かに 私は異教と 呼ばれた地に行こう

その地もまた 我が主が創った 王国である

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