神よ 貴方の顔の光を 私達の上に照らして下さい

射干玉の 月が衣を うらがへし

我こそ益さめ 竜をも凌ぐ程に 大地を覆い

貴方を求め 貴方を慕い 貴方を探す

揺れる芒が 吹かれる如く 焦がれ酔う

御神酒そーまを湛えた 瓶覗き

我が身はたた 水面二つの狭間にあり

あいいろ空が 我が衣手を いだき給う

憐れみの涙 星々よりも 水面の光よりも多く

その慈しみを 人は測れない

紅葉葉が 裏表を見せ 散るように

裏も表も 神は美しくされる

虫の喰った跡に飾りを 腐った跡を引き立てる

神はこの身を 隠すことはない

神は我が恥を 隠すことはない

神が我が罪を憐れむが如く

我が恥を愛し 我が嘆きを 受け止める

人々静まり 戌羯羅しゅくらの光も 来ぬ闇に

善の欠けたあくは笑い 指差し叫び

昨日 神が愛すると 言ったことを がなる

神は何度でも 彼らの言葉を 聞いておられる

聞いて聞いて 聞き抜いて それでも私を愛し

慈しみ この腕に抱くのだと 私を包み

亜麻布でくるみ 揺り動かす

私は母の胸より前 胎にいる時のように微睡む

神の腕は 母の胸の如し

その安らぎは 何をも恐れじ

我がぬかは きらきらしく 閃く

墨染め夕暮れ 海より出ずる

茜差す日 澄み渡り

白磁の光 海底わたそこの沖の如し

我が眼は 天つ星を 数得よう

栄花咲き開き 宇宙を抱く

その木漏れ日は 我が瞳に 我が旋毛に

零れ零れて 夜は昼が如くに 明るい

この世のどこにも 空蝉は無く

この世のどこにも 夜はなく

この世のどこにも 無辺無情の 悟りはあらじ

この世のどこにも その尊顔 崇めぬ場はなし

然り 我らの足の裏に 神がおられる

星よりも大地よりも 強固なる聖地 神がある


あいいろ大地に 伏して腕を開き

聖地に口付け 神を拝め

履き物を脱いで 大地を抱き

聖なる土地で 熾ゆる柴に平伏せ

主はそこにいまし 我らを照らしたまえり

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