第4話 死にゲー確定
あり余る幸福。
ファーストキスを終えたチェリーおじさんこと俺は、至極ご満悦なマーシーを胸抱きしめて、ソファに腰掛けていた。
彼女がお股を開いて、女の子座りで俺のうえに座っている。
エドウィンめ、チェリーおじさんが1日で何とかできるくらい、道筋の整った恋愛をムダに引き伸ばしやがって。けしからん奴だ。
「くんくん♪ にへへ、エドの匂いがする〜」
マーシーは楽しそうにニヤけながら言った。可愛い。
俺もくんくんして、マーシーの匂いがする〜とか、やりたかったけど、流石におじさんの精神じゃ、そんな小っ恥ずかしいことは出来なかった。
「エド、もう一回チュウしよ?」
甘えてくるマーシーは可愛すぎる。
唇をかさねて、柔らかい感触を感じる。
チュウが終わると、俺とマーシーはお互いの首筋に顔を埋めて匂いを嗅ぎあったり。
そのまま、つつましい胸に顔を埋めるようとすると、彼女は恥ずかしがった。
しかし、なんだかんだ、俺の頭をうしろから押さえる形で、たくさん俺の顔に押し当ててくれた。幸せだった。
俺の頭に鼻を押し当てるマーシー。
「くんくん、くんくん……あ!」
マーシーがいきなり、声を上げる
ドキッとしてると、顔をあげて困ったような顔で俺のほうを見てきた。
「今日は『
マーシーは焦りの表情でつげた。
その言葉に、俺は目を見開いた。
『魔獣狩りの夜』とはご存知、あの大傑作『フラッドボーン』における、とても重要な夜である。
通常『フラッドボーン』は『平穏』フェイズと、主にストーリーミッションが行われる『魔獣狩りの夜』フェイズを繰りかえして、物語が進んでいく。
俺が気にかけているのは、この″夜″はヤバいと言うことだ。
俺の予想が正しければ、モブキャラ風情である俺は、この夜に家の外に出たら……死ぬ。
このゲームのコンセプトは風土病である『魔獣の病』がはひごる古都バーナムにて、病気のせいで人間ではなくなった『魔獣』たちを感染予防する血塗れの習慣『魔獣狩りの夜』に、さっきの『銀人』たちがカッコよく、スタイリッシュに殺していくというものだ。
重要なのは、強い強い人間である、『銀人』でも平気で殺されること。
モブキャラの市民なんて、悲鳴役にしかならない。
「お父さんと、あ母さんには連絡入れてあげるから、今日は泊まっていかないとダメだよ?」
泣きそうな顔でつげるマーシー。
俺だってそのつもりだ。
まず自分の家がどこか、エドウィンがバカすぎるせいでわかってないし。
「それにしても、『魔獣狩りの夜』か……まずいな」
この世界、やっぱり『フラッドボーン』の中みたいだ。
となるとーー恐らく、この先に″地獄″が待っている。
⌛︎⌛︎⌛︎
玄関扉は金属製。
戸も何重にもロックがかけられ、家のなかは厳重な避難所として機能する。
あのゲームの設定では、基本的に『魔獣狩りの夜』のあいだは、バーナムの街中をうろついてるのは『魔獣の病』で、理性をうしない人間を食べるようになった人間ーー『魔獣』たちと、それを狩る『銀人』だけだ。
ーーズドォンッ
「ひゃッ!?」
「落ち着くんだ、マーシー。銃が撃たれただけだよ」
銃声が聞こえた。かなり近くだ。
家のなかでミスター・クラフトとマーシーと俺の3人で夕食をとっている時だった。
ふむ、やはり『銀人』たちによる、魔獣狩りは
ちょうどいい。
今確認しないと、絶対に後悔することがある。
それは現在が、『フラッドボーン』の物語のどのあたりの時制にあたる世界なのか、ということだ。
魔獣が狩られてる時点で、おそらくゲームエンドのあとの
市民たちが″家のなかで無事に過ごしてる″時点で、そこまで終盤でもないと思える。
だとすると、比較的に最初のほうの『魔獣狩りの夜』だと思うのだが……。
出来るうちに確認しておこう。
ストーリー進行度を判断できる、物語の分岐点を思いだす。
まずはーー、
「クラフトさん、旧市街ってもう焼かれてますか?」
谷底にある旧市街が焼かれるイベント。
アルファベットと同じ数ある、26個のマルチエンディングのうち、バッドエンディングのひとつが起こってしまう可能性があるイベントだ。
「旧市街? 街が焼かれたなんて話は聞かないがね」
ならば、まだまだ、序盤も序盤か。
もしも焼かれていたら、即刻、
その必要がないのはありがたい。
となると、今夜焼かれるのか?
あるいはもっと後の『魔獣狩りの夜』か?
どのみち、ほぼ勝ちイベントである最初のボス戦で負けるなんていうバッドエンディングを回避できるのは……主人公だけという事になるが。
これ、主人公が失敗したらどうなるんだろうか。
そもそも、俺がプレイヤーだったのに、この世界には主人公はいるのか?
もしいなかったら、いなかったで、ボス戦はどうなる? あのボスを谷底で倒さないと、うえに上がってきて悲劇を起こすとかいう物語だったけど……。
わからない。
すべてが不透明だ。
放置してバッドエンドで、俺の第二の人生完結?
絶対、嫌だ、それ。
確かめに行ったほうがいいか。
俺は不安そうな顔で、夕食をつつくマーシーを見つめる。
ふと、目があい、俺は安心させるように彼女へ微笑んだ。
俺は覚悟を決める。
2万時間プレイしたゲームだ。
モブキャラになったって、すこしはやれるはずだ。
夕食が終わったあと、俺はこっそり家を抜けだした。
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