第3話終わりの理由

いきおい良くオレオの入った袋を開けると流れるような動作で次々と口にいれ、クッキーは消えていった。

「さすが、世界一売れてるクッキーだな。これに勝るものはない。少年、君にもやろう」

やや強引に那由多はオレオを握らせた。

黒いクッキーを少年は口に運ぶ。

甘いクリームが口に広がる。

もそもそと食べていると、じっと探偵を名乗る女は少年の目を見た。

心の奥底を見られてるようで、気恥ずかしくもあったが、なぜだがへばりついていた恐れのようなものが剥がれる気がした。

「困ったことがあれば、誰かを頼ることは決して恥ずべきことではない」

そう言うと探偵は少年の手のひらいっぱいにお菓子を渡し、去っていった。


そうだ。どうしてこのことを忘れていたのだろうか。追い詰められて、凝り固まってしまった心ではその発想にいたらなかったのかもしれない。

時間をもどすことができればよかったのに。


翌日、彼は山崎理恵に呼び出され、人気のない校舎裏に来ていた。理恵は少年を奴隷のように扱うグループのリーダーであった。祖母がロシア人というこで、金色の髪が自慢のそれはそれは美しい少女だった。

その端麗な容貌とは裏腹に人を傷つけることを無上の喜びとするような人間だった。不思議なことに誰も彼女のいうことには逆らうことかできなかった。まさに女王そのものだった。

白い指にボールペンを持ち、その先端を少年の頬に突きつけていた。先端か肉をさき、じわりと赤い血がにじんだ。

出血する様子を眺めながら、理恵は微笑んだ。

サディストの笑みであった。

「帆村、昨日は邪魔が入ったが今日は面白い遊びを思いついた」

理恵が豊かな胸元の前で腕をくみながらそう言うと取り巻きの男子生徒二人が全力で少年の体を押さえつけた。

「百合子やれ」

三つ編みの銀縁眼鏡の少女が理恵の後ろから現れて、少年のズボンのベルトに手をかけた。

一気に引きずりおろすと、下半身があらわになった。

少年は抵抗するが押さえつけられていて、動くことができない。

「ごめんね、帆村くん……」

そう言うと百合子は細い指で少年の下半身の一部分を握りしめた。

彼女もまた山崎理恵に逆らえない従者の一人だった。

冷たい指で包まれた少年の一部分は意思とは反対にすぐに反応し、熱く、固くなっていた。

その様子を見て、理恵は気が狂ったのではないかと思われるほどゲラゲラとわらった。

笑いながら、彼女はその様子をスマートフォンで撮影していた。

やめてくれと叫びたかったが氷のような瞳で眺める理恵の目を見ると蛇ににらまれた蛙のように何もいうことができなかった。

指で握っていた百合子は苦痛の表情を浮かべながら、手を上下に動かし、絶え間ない刺激を少年の体に与え続けた。

少年の意思などお構い無しに体は反応し続け、耐えようのない快楽が背筋を駆け抜けていくのが感じられた。

「ごめんね、ごめんね」

そう言いながらも百合子はこれ以上ないぐらい固くなったものを握り続け、ぬるりと濡れるものをしごき続けた。

やがて少年の体は耐えられなくなり、体の深淵からほとばしるものを外に出しつくした。どくどくと流れだし、百合子の指を汚していく。

脳天を直撃する快楽とともに体液を吐き出したと同時に彼は耐え難い屈辱と汚辱にまみれた。

これほどの辱しめはないだろう。

「帆村、お前は一生私の奴隷だ。絶対に逃がさない」

高笑いと共に山崎理恵は言った。


そう、逃れられないのだから、僕は死を選んだのだ。


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