第53話 学園祭準備
「いよいよ明日は本番だね!」
「もう準備だけでくたくただよ。文化祭ってこんなに大変なのかよ……」
「私は初めてだけど、お兄ちゃんは3回目だから慣れてるはずじゃないの?」
そんなにジト目で見るな妹よ。
ミスターゼロと言われ続けた俺が、まともに文化祭へ参加した事などあるわけないじゃないか。
「慣れうんぬんの前に出番が多過ぎるんだよ」
口ではそう言ってみたものの、今回が文化祭初参加のようなものだなんて言えやしない。言えやしない。言えやしない。寂しくなったから3回言ってみた。
「今回はお兄ちゃん大人気だもんねー。文化祭の主役みたいなもんだよ」
文化祭の主役って普通は美少女だよね?
ミスコンとかコンサートとか演劇とかメイドカフェとか。
……なんで今回俺が全部出るんだよ!?
さすがにミスコンは出れないからミスターコンテストに勝手にエントリーされてるらしいけど。
ミスターコンテストって楽しいのかな?アピールポイントは『スネ毛』ですって言って足だけめくって予選落ちしようかな……あ、モデルの仕事で剃られてツルツルだった。
「でもメイドはないよな?普通に執事でよくない?」
「お兄ちゃんのクラスはメイド喫茶なんだよね?結衣ちゃんの強い要望でメイド姿になるんだっけ?」
そうなのだ。結衣発案のメイド喫茶だから全権を握っている為、こともあろうに俺もメイドに指名したのだ。男だよ俺?
もちろん俺は全力で反論した。そしたらまさかの反撃に……
『メイドやらなくてもいいけど、その場合は代役で新菜ちゃんを借りちゃうよ?』
アイツは悪魔だ。こんな可愛い妹がメイドなんてやった日にはずっと満員御礼になっちゃうじゃん。
しかもレアなコスプレをけだもの達に見せたくない。
新菜が「いらっしゃいませご主人様」なんて他の男子に言ったら3日はご飯食べれなくなる自信がある。
ちなみに俺は「お兄ちゃん!」て言われたい……
「なんでニヤニヤしてるの?」
「はっ!いらっしゃいませご主人様」
「え?すごい気合い入ってるね。明日行くからサービスしてね!」
いかん。つい妄想していたらメイド姿とお兄ちゃんが頭で混ざって俺がいらっしゃいませって言っちゃったよ。
心配しなくても新菜が来たら並ばずに特等席で、大好きなハーブティーを10杯用意するから心配するな。
ひいきじゃないよ。VIP待遇なだけだよ。
「演劇は生徒会主催なのになんで俺が出るんだよ?セリフなんて覚えられないって断ったら、全部口パクでいいって斬新すぎるよな?」
「生徒会長の薫さんが3年生最後の思い出にお兄ちゃんと演じたいって言ったんだっけ?キスシーンがあるって聞いたけど……」
「ラストのキスシーンで場内のライトを全部落としてフリだけするんだよ。新菜以外とキスするわけないだろ?ん?どうした?」
頬が赤く染まりよく見ると耳まで赤くなって俯いている。
相変わらずの純情ぶりで箱にしまって持ち歩きたいくらいだ。
シスコンだって?当たり前だろ。シスコンバンザイ!
「もうお兄ちゃん!キス……意識させないでよ……そゆーとこだよ?」
どーゆーとこだよ?
新菜は今でも俺の恋の教育係みたいなものだけど、照れちゃったらわからないよ?俺も恥ずかしいから聞けないけど。
「い、意識って言われると俺まで想像しちゃうからダメだよ」
「想像だけで……いいの?」
な、なに言ってんだよ?新菜さん?学校だよ?
これじゃリア充のバカップルになっちゃうよ?
ふたりで固まっているとーー
「見つけたーー!!ライブの練習って言っておいて軽音の部室でイチャイチャしてたんでしょー?まだ私も諦めてないんだからね!」
勢いよくドアを開けた結衣が入ってくるなり叫んでいる。
そんなにライブ出るの諦めてなかったのかよ。
「ライブ代わってやろうか?」
「鈍感男!」
なにそれ?昔流行った電車男みたいなやつ?
はぁ〜とため息をつく結衣。こんなポンコツにため息をつかれるなんて屈辱だ。
しかもいい雰囲気をぶち壊しやがって。
「それでなんで探してたんだよ?」
「あ!そうそうそれを伝えにきたのよ!明日のミスコンとミスターコンで優勝したら打ち上げのキャンプファイヤーで最初にペアで踊るんだってさ!この意味わかるよね?」
「たしかキャンプファイヤーでダンスしたカップルは将来結ばれるってやつか?そんなの噂だろ」
「はぁ〜。これだから……」
こいつ今日はやたらとため息ついて絡んでくるな。
ため息するたびに幸せは逃げていくんだよ?
残念結衣ちゃん。
ペアでダンスか……ん?ペアでダンスだと……
おそらく女子は新菜が優勝する。
他にも候補はいるだろうが問題は男子の方だ。
男子の友達がいないからあまり詳しくは知らないが、ミスターコンで現在2連覇中のイケメンがこの学校にはいるらしい。
名前は当然知らないから『たぬきち君』とでもつけておこう。
もちろん悪意がある命名だ。
新菜から聞かされていたが、たぬきち君は入学してきたばかりの頃から新菜に交際を申し込んでいたのだ。
しかも僕はモテるから箔がつくだの、付き合って損はないだの常に上からの態度に珍しく新菜が怒っていた。
怒った理由は他にもあったらしいけど、大事なところは教えてもらえなかった。
しつこく付き纏ってきたたぬきち君にとって、明日が最大のチャンスだ。
そんな奴とダンスなんかさせるわけにはいかない。
明日は絶対に負けられない戦いになるだろう。
「たぬきち君には絶対負けん!」
「お兄ちゃん誰なのそれ?」
「俺もわからない?」
「わ、私もお兄ちゃんと踊れるように頑張るからね!」
健気でかわいい……
妹は絶対に俺が守る!!
ミスコンミスターコンは学園祭の最後に行われるが果たして結果は……
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