第43話 お願い
俺は泳げないし日差しもかなり強くなってきたので、別荘へと戻る事にした。
別荘へと戻りシャワーをそれぞれが浴びて出てくる頃には外は灼熱の太陽が照りつけている。
自転車はあるけどこんなの外に出るのは自殺行為だよな。
幸いここまで車で送ってきてくれたうちのメイドが、夕食は作って温めるだけですむようにセッティング済みだった。
しかし夕食にはまだ早いのでふたりともリビングの大きなソファーに寝転んでくつろいでいる時だった。
「お兄ちゃんてさ〜どんなタイプの女の子が好きなの?結衣ちゃんとか、薫さんとか、私……とか」
「好きなタイプもなにも今まで好きになった事とかなかったし」
う、これはもしや女子旅にあるあるの恋愛トークじゃないか。
「なかった?今まで?過去形……へ〜そうなんだ」
しまった。気付いて欲しい気持ちが無意識にほんの少しだけ出てしまった。ここは逆に質問返しで誤魔化そう。
「新菜こそ入学してからたくさん告白されてるみたいだけど、まったく男子と話するのも見た事ないな。彼氏とか欲しくないのか?」
「そ、そんな事を女の子にストレートに聞いちゃダメなんだよ…それに誰でもいいわけじゃないんだからね…」
これでもかってくらい顔を真っ赤にして、完全にフリーズしてしまったようだ。しかもなんで目線だけはこっちをチラチラ見てるんだよ。もしかして……いや……
な、なんだよこれ。いつもよりもさらに…か、かわいいじゃんか…。勘違いしちゃうだろ……
ひょっとして俺が自分の気持ちに気付いたからさらに愛しく見えてしまうのか?これじゃまるで俺は乙女じゃないか。
「そ、そういえば今回のこの別荘だけじゃなくママからお小遣いをすごくもらったって言ってたけど、私達はほとんど使わないのに急にどうしたのかな?」
すごい話の切り替え方だな。新菜もなにか聞かれたくない事があるみたいだ。好きな男でも出来たのか…。
「報酬だかなんだかって言ってたな。俺達は殺し屋かっての」
母親から急に国際電話がかかってきて、お金が振り込まれてきたのだ。すでに魔法の上限なしのカードを預かっているのでお金にはまったく困っていないのに。
特に報酬ってのが気になる。俺達はバイトもしていないしましてや、やばい商売もやっていない。ただの一般的な高校生なのだから。
「なんだかすごく嫌な予感がするな……」
「同感……」
そんな話をしているうちに夕陽がかなり落ちてきた為、ふたりでバルコニーへと移動する。この別荘は先程のプライベートビーチよりかなり高い位置にあるので、地平線へと落ちていく夕陽が海面を照らしまるで黄金のような風景に感動するのは当然だった。
無言でサンセットを眺めていると新菜がゆっくりと話だした。
「さっきのお願いなんだけど……」
「いいぞ。なんでも遠慮なく言ってくれ」
「おにい……勇樹さん…私と付き合ってください」
ただただ呆然とする勇樹が言葉を失って立ち尽くしていた……
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