第41話 課題
特別な朝食を食べ終わりいまは俺の部屋で夏休みの課題を取り組んでいる…はずなんだけど…
朝食では結局ずっと手を繋ぎながら無言で食べていたので、ほとんど会話をしていなかった。片付けが終わってから歯を磨いて恥ずかしさと達成感との感情に動揺した俺はすぐに自分の部屋へと逃げるように戻ってきてしまったのだ。俺のヘタレ具合ときたら自分でも呆れてしまうな。
しょ、しょうがないだろ!妹が初恋の相手だなんて小説やドラマじゃないんだから!一緒に住んでてかなら毎日顔を合わせるし2人で住んでるんだから気持ち悪いと思われでもしたら……などと考えていると
コンコン!とドアをノックする音がして
「お兄ちゃんいい?」
「あ、ああ」と返事をする俺。心臓がーー!!
「勉強しにきたよ〜」にっこりと微笑んでくれる。
あ、俺って馬鹿だなぁ。この笑顔から逃げてどうするんだよ。妹に気を遣わせてどうするんだ俺は!ちょっと過保護なお兄ちゃんくらいにしか思われてないかもしれないじゃん!うん、そうしよう。そう思う事にしよう。
「よし!始めるか!」
「うん!」
ーーーーー30分後
ダメです。全然集中出来ません!
俺の部屋に入ってきた新菜の服装が大胆過ぎて耐えられる訳ないだろ。反則級の格好だ。暑いからと本人は言っていたけど、家の中だからってそれはちょっと……
真っ白なタンクトップにうっすらとピンクの下着が透けていて、下は白いショートパンツ。こちらも下着のラインが微かに浮き出ている。
どうしてそこまで白い上下で露出が高いんだよ。肌も透き通るような真っ白だから純情とエロスのミックスさが滲み出ていて自然に目が奪われてしまうじゃんか。
そこで追い討ちがこの課題だ。ロシアの文学作家の作品「初恋」についてのレポートだと?
いま初恋を意識させるってどんな罰ゲームだよこの課題。
新菜の課題はと盗み見るとーーー
「えっ!」思わず声を出してしまった。
「あっ!」
「実は課題はお兄ちゃんがジョギングしてる間に全部終わってて………今はお兄ちゃんの顔をスケッチしてた」
なんだ、通りでさっきからチラチラ見てると思った。でもなぜ俺の顔なんかスケッチ?
「髪の毛切ったお兄ちゃんがほんとにかっこいいから、形に残しておきたくて」
「スマホで写真じゃダメなのか?」
「写真だと……」急に顔がうっすらと赤くなっていく。
「それよりお兄ちゃんはどんな課題やってるの?」
「初恋だよ」やばい。俺の顔が熱くなっていくのがわかる。
ん?新菜も初恋って聞いただけで黙って俯いてしまったけどどうしたんだろう?初恋を思い出しているのか?
なんだかすごく気になってきた。矛盾しているかもしれないけど聞きたくないのに知りたい。どうしても気になって我慢できずに聞いてしまった。
「に、新菜の初恋ってどんな相手だったんだ?」
「い、いきなりお兄ちゃんなに言い出すの?お、お兄ちゃんこそ初恋っていつでどんな人?」
うわー!墓穴掘ってしまった。質問からのまさかの質問返し。質問あるあるのパターンだよこれ。しかもいつとか聞くか?今です!なんて言ったらばれるだろうしなにより初恋って幼稚園とか小学校とかじゃないだろうか?
高校3年にもなって初恋とか言ったら気持ち悪いと思われる気がする。しかも妹になんて……とりあえずはごまかそう。
「年下の仲がいい子」
「お兄ちゃんの仲がいい人ってあまりいないよね?しかも年下って」
妹よ……珍しくグサ!とくる強烈な返しをありがとう。年下は言って失敗した。年下の知り合いなんて1人もいないし。
「に、新菜の初恋相手はまた会えるのか?」気になってしょうがない。
「毎日……だ、だったら素敵だよね」
俺と同じくらい動揺している。毎日って……そんなテレビの中の人以外いない気がするけど。
こんな感じで課題はまったく進まない1日だった……
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