第38話 クスクス
「ヒャッホーウ!」
アウトレットモールに着くなり結衣が叫ぶ。主役でもないのにうるさいぞ!
「うわ〜すごく広いんだね〜。いいお洋服見つかるかな〜」
うん。きっといい子の新菜にはいい洋服が見つかるはずだよ。うん。可愛くてきっと似合う服が見つかるはず。逆に洋服から天使を見つけてくれるはずですはい。
「なにぶつぶつ言ってるの〜?さっき変なもの見せたんだからショッピング付き合ってよね〜」
自分から見たんじゃないのか?しかもおっさんの至福の表情と全体のシルエットを見て絶叫したらしいが……俺のせいじゃない。
『ぴこーん!』
薫からのラインか?えーと…あと10分ほどで着きます?
え!?ついさっきラインで海ほたるにいるって連絡したのに、なんでこんなに早く来れるの?もしかしてタケコ◯ターとか持ってるの?あるなら俺もひとつ欲しいんですけど。
「薫が10分ほどで来るらしいから俺は待ってるよ。なんだか少し可哀想だしな」
「……うんわかったよ。少し慰めてあげて元気出たら合流しよう」
結衣も珍しく聞き分けがいいな。先生も新菜も優しく微笑んでいるけどなんなんだ?俺が薫を待つ事を喜ぶ気持ちがいまいちわからないけど、俺の行動は間違っていないらしい。
「じゃあ私達は下着のリコールから見てくるね!」
ペロっと舌を出して新菜が言った。下着屋さんから行くっってわざと?わざとだよね?俺が想像して照れるの見越してるよね。はい…想像してすいません…。
俺も連絡を待ちながらお店でも覗いてみようかな。あ!朝のジョギング用にウエアが欲しいな〜。お姉さん達はすごくお洒落なウエアで走ってるので、俺の格好は釣り合わなくて恥ずかしいんだよな……
スポーツメーカーのお店もかなりあるみたいだし、ジョギング用のウエアとついでにシューズも見てみるかなぁ〜
まずはナイクに入るとさすが大手のスポーツメーカーだ。
店内も広いしアイテムの数もかなり豊富過ぎてさっぱりわからない。いろいろ手に取ってみるけど全然イメージと違うな〜。すると……
若くて可愛らしいショップの店員さんが近寄って来た。
「どんな事にお使いですか?」
「バリバリ走るわけじゃないんですけど、ジョギングする時に今風(いまふう)のウエアがーーーー」
「今風…クスクス。あ、ごめんなさい。失礼しました。」
なんだか笑われてしまってすごく恥ずかしい。ついOLのお姉さん達が頭に浮かんで今風(いまふう)と言ってしまった。
「こちらのウエアとかいかがですか?お客さまはかなり注目されやすそうなので、少し派手なくらいの方が似合うかと思うんですけど今風ですし。クスクス」
なんだーこのクスクス星人は!しかも注目されやすいから派手がいい?そんなに俺ってオタク系地味男だったのかよ…
オタクって目立つから仕方ないよな。でも俺はぼっちではあったけど、オタク関連の事はいっさいわからないし髪も切ったから見た目もましだと自分では思っていんだが……
自信過剰だったようだ。怖い顔は卒業出来たと思っていたけどオタク顔だったとは。気を引き締めていこう。
「じゃあ試着出来ますか?」
「はい。ではこちらへどうぞ。お手伝いしましょうか?クスクス」
お、お手伝いって脱がされちゃったり着せられちゃったりするの?そ、そんなサービスまで最近はやってるのかよ。
「着せられたりはちょっと恥ずかしいので…ひ、ひとりで着替えられます」
「えっ?」
「えっ?」
「あの……そういったサービスはないのですが、ご希望でしたら……クスクス」
おおおおおおおおおおお!
やってしまった!!!!!
俺の完全な勘違いじゃねーか。穴があったら入りたい……
とりあえず試着室にこもってしまおう。
おう!選んでもらったウエアを着るとこんな俺でも見栄えがいい。まるで芸能人が運動会するみたいな存在感のあるウエアだ。すっかり気に入ってしまった。
「サイズはいかがですか?」
「うひゃ!」ビックリして変な声を出してしまった。
「クスクス。見た目よりお茶目なんですね。クスクス」
まさかすぐそこで立ってるとは思ってもいなかったんだよ。「ちょうどいいです。これに決めました」
「ありがとうございます。ちょっと覗いてもいいですか?クスクス」
「え!?」
「冗談です。クスクス」
どこまでが冗談なのかわからないぞこの娘。急いで着替えないとマジで覗かれるかも。
会計を済ませようとポケットに手を入れるとーーー
ない!生徒手帳がない!親から渡されてる魔法のカード様が入っているのに。焦っているのが伝わったのだろう。
「何か落とされたのですか?試着室をすぐに見てきますね」
(あ、この学校の生徒手帳って……如月勇樹さんか〜。クスクス)
「試着室に落ちてました!」
「ありがとうございます!ほんとありがとうございます」
テキパキしててクスクス笑うから顔もよく見てなかったけどよく見るとこの娘、俺より若くないか?新菜と同じくらいかな?見た目は新菜までいかなくても間違いなく美少女に分類されるだろう。
会計を済ませ店の入り口まで見送られる。
「ありがとうございましたー。ではまたお会いしましょう〜せ・ん・ぱ・い。では!」
あれ?いま最後にーーーー
「あら!反省してるかと思えば女の子とよろしくやってらっしゃるとはいいご身分ですわね!」
そこには仁王立ちの薫が不敵な笑みを浮かべて立っていた。
「なんでも言う事を聞いてくださるの非常に楽しみですわ。うふふ」
最悪のタイミングで合流してしまったらしい……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます