第33話 みんなでプール
今日も朝からジョギングを行なっている。
「はぁ……」
「なんだなんだ?若いくせにため息ついて。せっかくの顔が台無しだよ」どうせ最初から台無しだからたいした問題ではないけどな。
「昨日の夜に友達?のような連中から電話があって、今日プールに行く事になったんですよ。実は俺……カナヅチなんです。しかも妹もそれを知らなくてカッコ悪いところ見られたくなくて……」
『ゆーちゃんと走ろう会』のメンバーとの会話である。いつの間にそんな会の名前になったんだ?しかもOLのお姉さん達20人くらいに増えてるし。
「へーお兄さんしてるんだ〜。ゆーちゃんは私達の弟みたいなもんだけどね」
昨日の今日で姉が20人出来ました!……なんて新菜に言ったら腰抜かすな。
「見栄を張らずみんなに教えてもらうのが男らしいと思うよ」違うお姉さんがアドバイスしてくれる。昨日の洋服でもそうだけど中身が伴っていないのに見栄をはってもしょうがない。
「みなさんありがとう」
「いいよ、いいよ。今度一緒に海に行ってくれれば」
「えっ……それは……」
「逃げたら分かってるよね〜」
食べられるのは嫌だ。明日はスマホを持って来てねと言われて手を振り家に帰る。俺をどうしたいんだあの人たち。
家に着くといきなり「ジャーン!」水着姿の新菜が部屋でウロウロしていた。
「どうしたんだ?江の島や試着を付き合った水着とまた違う水着で」
「違うでしょー!そこは似合うよとかかわいいね!でしょー」
あ、そうか。ジョギングの時にお姉さん達は夏だからかほとんど水着みたいなセクシーウエアの人もいてだいぶ免疫が出来つつあるみたいだな。
「試着の水着は一緒に海に行くまでのお楽しみなの。えへ」やっぱり素のままが一番可愛いよな。
水着の話題の今ならカナヅチの事が言いやすいと思い、
「実は俺さ泳げないんだよ」
「うん。知ってるよ」うそ!知ってるのになんでプール行くんだよ。
「私もだけど結衣ちゃんも薫さんも日焼けしたくないからホテルのナイトプール行くんだよ」
ナイトプールってなに?ナイトサファリみたいな奴?プールにサメとか泳いでるとか。
「ナイトプールはインスタとか映えの為にあるようなものだから泳がないから安心して」
インスタ?ハエ?映えか。まったく興味がないのでなにを言ってるのかわかっていないけど。
「なら良かったよ。安心した」
安堵の表情を浮かべる勇樹とは裏腹に今回の本当の目的、いわゆる極秘任務の為に新菜は緊張していた。その理由は後ほど分かる事になる。
ーーその日の夕方ーー
浜松町駅で待ち合わせをしているらしく俺と新菜は改札口を出ると薫と結衣が手を振っていた。
「ところで新菜もそうだけど、どうしてみんな浴衣なんだ?俺まで甚平を着せられて恥ずかしいんだが」
浜松町駅界隈はビジネスマンが多いので日中はこの服装は恥ずかしい。しかし夕方になるとフェリーだの屋形船だのの為に浴衣姿が多くなってくるのだ。
ホテルでナイトプールは行っているらしく4人で歩いて行く。すると女子3人が先行して歩きながらなにやら小声で話をしている。
「いい?今回の目的はお兄ちゃんが女子ばかりに囲まれても理性に耐えられるように免疫つけるためだからね。それと髪の毛を切ってどれだけモテるのかの実験でもある事を忘れないように!」
「「ラジャー!!」」
夏休みが終われば勇樹は美少年だという事が全校生徒に知れ渡る。その前に少しでも免疫をつけてもらい女子への断り方などコントロールできるようにするのが今日のミッションだった。果たして上手くいくのやら……
「ナイトプールか〜初めてプールが楽しみだな」
泳げない勇樹にとっては今回のミッションも知らず気楽なもんだ。インスタ映えを狙う女子ばかりのプールだとは思いもしないのだが……
ホテルに着くとそれぞれ着替えてプールサイドで待ち合わせをする。
果たして勇樹の運命はいかに……
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