第32話 モデルさん
表参道に移動すると渋谷とは違った空気が流れていた。渋谷は流行の発信地ではあるのかもしれないけど、とにかく人が多くて俺には合わないな。
渋谷のスクランブル交差点は世界でも有名らしいけどいろんな意味でスクランブルだよほんと。
表参道では時間の流れが違っている。お洒落なオープンカフェでは雑誌や本を読みながらラテを飲んで私はお洒落でしょ?とアピールしているように見えた。
勇樹にはそれが面白かった。本当にお洒落な人はなにをしてもさまになる。新菜を見てみろ。ただ歩いているだけなのに周りが見惚れて、雑貨屋でボールペンを買うだけでコマーシャルみたいじゃんか。
「お兄ちゃんどうしたの?さっきからぶつぶつ独り言言って私の顔を見てるけど」
あ、心の声がだだ漏れしてた。ひいきなしでうちの妹は世界一可愛い。
「あらためて新菜は世界一かわいいなと思ってな。自慢の妹を無意識に目が追ってた」つい正直に言っちゃったよ。あの目を見たら嘘はつけないぞほんとに。
「い、妹を相手に口説き文句みたいなこと言わないでよ……。お兄ちゃんも前髪ないからカッコイイ顔が見えてある意味凶器だよ」目がおよぎながら頬をピンク色に染めてこちらも正直に言っている。すごくかわいい。
やっぱり俺の顔は凶器になるのか。世の中不公平だな。
おい!勘違いしすぎだぞコイツ↑(作者ツッコミ)
コホン…妹にもけなされ?少し落ち込みながらも目的の紹介されたショップへ辿り着いた。モデルも良く使う一軒家をお洒落に改装したセレクトショップのようだ。
店内へ入ると店員さんが勇樹と新菜を見て笑顔で駆け寄って来た。
「来たらすぐに分かるからと連絡をもらってはいたけど、なるほど……うんうん」
どうやら紹介の連絡ですぐにわかったようだが、足から頭まで舐めるように俺たちを見ているお姉さん怖いんですけど。
それは仕方のない事だった。新菜だけでもファッション業界に携わる人間なら手掛けたいと思うのに、勇樹という逸材まで一緒にいるのだ。
プロ意識が刺激されないわけがない。新菜と勇樹は有名モデルが表紙のファッション雑誌の中からイメージを伝えてそれぞれ最高のコーディネートをしてもらった。
たまにはこんな服もいいかもしれないな。ただ……なぜだろう。新菜は服を着こなしているけど俺は着せられてる感が否めない。
多分今まで過ごしてきた自分の行動に胸を張れるような事が一切ないからだろう。外見ばかり綺麗でも内面はごまかす事が出来ないからな。
今日は自分を見直すいい機会になったと思う勇樹だった。
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