第31話 お洒落な兄と妹
シャワーを浴びて出てくると新菜が待っていた。
「せっかく早く起きたんだし、サマーセール行こうよ」
「まだ俺は朝ご飯も食べてないんだぞ?ジョギングでお腹ペコペコだよ」
「その髪型に合うお洋服買いに行こうよ!お出かけついでに朝ご飯は外食にしちゃおう!」
今日はすごく元気だな。ふたりだけで出かけられるなら俺も楽しいしそれもありか。
「じゃあ急いで出かけるか?」
「うん!」
はい!そのかわいい笑顔いただきました!
最近はぷんぷん顔の方が多かったから今日はたくさんの笑顔を見れるように頑張るか。
今日は渋谷のセールへ行く事にした。
ちなみに両親から渡されているカードで、毎月の決められた金額を超えなけれいいのでお金の心配はない。
ずいぶんと俺たちを信用してるよな。
その信用に応えているからいいけど。
渋谷へ着き山の手線の改札口を出る頃には俺はウンザリしていた。
ハチ公前にはすでに大勢の人が待ち合わせをしている。
ナンパで声をかけられるのも嫌だからと新菜が腕を組んでくるが、それでもしつこく声をかけられる。
なかには「怪しいものじゃありません」と言って名刺を出してくるが、自分から怪しいものですと言ってくる奴なんかいる訳ないだろ。
今日は女性まで声をかけてくる。
女性からも狙われるとは……新菜は誰にも渡さん!
もちろん勇樹と新菜ふたりのスカウトを勘違いしているだけだ。
「お兄ちゃん今日は一段と声かけられるね」
「新菜が可愛いすぎだから仕方ないけど多過ぎだな」
「か、可愛い過ぎって……」
久しぶりに顔を赤らめて言葉に詰まってるな。この照れた顔がたまらない……ってこんな事考える俺は変わった?
などと考えているとまた声をかけられる。
「すいません。すごくお洒落でお似合いのカップルだから雑誌に載せたくて〜。写真の許可と掲載の許可頂きたくて〜もちろん雑誌も送るので」
お似合いのカップルと言われて、勇樹も新菜も舞い上がってしまった。
「お似合い…カップル」
「ふたりで雑誌か…記念にいいかもな……」
まんまと綺麗なお姉さんの術中にはまってしまった。
でも住所を知られるのは嫌なので、名刺をもらって後からラインを送る事にした。
いままでさりげなく腕を組んでいたのが、カップルと言われてからふたりとも緊張してしまった。
こんなガチガチじゃどう見ても結婚式のお父さんと娘じゃんか。
「じゃああっちの少し人が少ないところで」
雰囲気のある坂道の途中で写真を撮る事になった。
「ほらほら緊張しないで遠慮せずラブラブなところ見せていいよ」
「あらあらその笑顔は彼氏と彼女の為にしか見せないのかな?」
読書モデルのように数枚と言っていたのに、モデルの撮影のように言葉巧みにいろいろな表情を引き出される。
横目でチラッと新菜を見るとほんとに可愛いな……
あ、チラ見バレたら初々しい感じだなぁ。
新菜の方も勇樹を……爽やかな髪型の勇樹をほんとに見惚れてしまっていた。ダメダメ!お兄ちゃんなんだからダメ!いろいろ自分に言い聞かせているが……
「はい!ありがとうございます!絶対に連絡くださいね!絶対ですよ!」
普通の高校生モデルよりも、誰よりも可憐で可愛い天使のような新菜とリアル王子様のような美少年の勇樹をモデルにしたのだからプロとしては下手な写真は撮れないと覚悟の撮影だった。
「サマーセールどころかショッピングもまだ出来ないな」
「でもお礼の代わりにモデル御用足しの紹介されたショップで1組ずつお洋服もらえるってよ。表参道の方みたい」
人混みも疲れたのでセールはやめて、好意に甘える事にするか。このまま腕組んでいると理性が吹っ飛びそうだし。
でも手ぐらい繋いでも……
「えっ!?」
「えっ!?」
同時に手を繋ごうとしてたらしい……
ふたりしてうつむき加減で頬を赤らめながら手を繋いだ。
やはり夏は誰もが大胆になってしまうらしい。
兄と妹だぞ!と突っ込みたいがふたりだけの世界を邪魔出来るものは今日は誰もいなかった。
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