第28話 先生とデート!?

「初任給が嬉しくてローンで買っちゃったんだよね〜」


イタリア車の赤く丸みを帯びたオープンカーは夏にピッタリだ。

その運転席には無邪気な笑顔を向ける姫野先生がいた。


あれ?先生ってこんな表情をしてたっけ?

勇樹の記憶ではクラスの生徒だろうと誰に対しても無関心で、無表情だった。

怒る事もなければ笑う事もない。


クラスの問題にも積極的には動かずいつも遠くから眺めている感じだ。

なにか引っかかる……


しかし目の前にいる人物は常に笑顔を絶やさず笑いかけてくる。


2時間くらい車で走ってきただろうか。

江の島の海が見えてきた。


「やっぱり夏は海でしょ!」


「先生、生活指導が脱線してる気が……」


「これも社会授業よ」


車を止めると俺の腕を引いて浜辺へとかけて行く。

そして突然!!!

タンクトップと短パンを脱ぎ出した。


「外、外だよ先生!」


「ひどいな〜。学校じゃないんだからミクちゃんて呼んでよ。それに……」


なんだよ服の下は水着かよ。心臓に悪いじゃんか。

しかも先生脱ぐと凄いです。

白い肌に赤い水着がよく映える。

それ以前にハリのある胸とお尻が大人の魅力を全開に引き出していた。


「名前が美紅だから赤い色が大好きなんだ〜似合うかな?」


今年はどうしてこうも水着を見せられるのだろうか?

水着の神様でもいるのかもしれない。


「凄く似合ってますよ。でも俺が学生服で不思議な組み合わせだと思うけど」

「じゃああそこへ行こうっか」


指差した先には江の島で有名なスパ施設があった。


ーーースパ施設へ歩いて行く途中ーーー


水着姿で歩く先生を見て何回かナンパをされていると、3人組の大学生風の男達が絡んでくる。


「こんなオタクといてもつまらないでしょ?俺達とエンジョイしようぜ」


なぜみんな同じような事しか言わないのだろうか?

さてはみんなナンパロボットだな。

ロボットに効くか、わからないが俺の怖い顔で追っ払ってやろう。

いつものように前髪をかきあげて美少年顔を相手に見せつける。


すると三人組はさらに逆上してきた。


「年上の彼女もその顔も世の中不公平だろ」

そう言って襲いかかってくる。


「あ、おまわりさーん!こっちです」


その言葉を聞いて3人組は一目散に逃げて行った。


「勇くん危なかったね〜」


「俺の怖い顔が効かなかった……」


キョトンとした表情の先生は状況が呑み込めずにいるらしい。

俺の凶悪な顔のハッタリが効かなかったというのに。


「怖い顔?そうねある意味反則顔よね。男女問わず……わたも……」


やっぱりそうなのか。今回はたまたまだったようだ。

気を取り直してスパへと到着するとレンタル水着を勝手に頼まれてしまった。


「ここは水着で一緒に入れる温泉施設なんだよ」

「誰も一緒に入るなんて言ってないけど」

「あーその感じその感じ」


冷たくしてるのになぜか嬉しそうだ。


「着替えたら室内プールで待ち合わせね」


先生今日はいったいどうしたのだろうか?

進路指導のはずが、今日の目的がわからない。


ただ何故か他人事ではない気がして放っておけなかった。


向こうは最初から水着の為すでに室内のジャグジーに浸かっていた。

俺はさすがにスパ施設なので髪をまとめている。


「勇くんこっちだよー。ほらほら隣に早く……」


言いかけて途中でフリーズする。

期末テスト以来の表情だ。

さすがにそんなにガン見されると俺でも恥ずかしい。


無言で一緒にジャグジーやらアロマサウナやら入ってから、洞窟風呂へと移動した。

ちょうど誰もおらず洞窟からは海が見えていた。


先生がゆっくりと語り出した。


「大学卒業していきなり担任持たされてさ結構きつかったんだよね〜。しかも進路のある3年生だよ?ありえなーい。自分の道がようやく教師に決まったばかりの私に人の人生相談

できるかっつーの。自分の事以外に興味ないしあまり関わりたくないのにさ。」


そうか。俺と先生は根本的なところが似てるんだ。

だから無理に車に乗せられてもまーいいかと思ったのだろう。


「勇くんは4月は私の目指す最終形態みたいなくらい周りに無関心だったのに、少しずつ人が……しかも美少女ばかり集まってきて、それとともに毎日楽しそうに見えてさ。でもブサイクで年下は尚更だけど興味ないと思ってたら試験で目が合ったじゃない?ビビ!っと来ちゃったよ。」


「あれはカンニングを疑ってたわけじゃないんですか?」


「なによそれ。うふふ。やっぱり面白いよねー。でも教師から生徒を誘うわけにもいかないし、私は他人に対して特に男性に対して興味なかったから……でも今日は私の初めてのデートしちゃったよ」


ペロっと年上の女性が舌を出して笑うと可愛いな……

先生だと忘れてる勇樹。


「なんなら私の初めてを全部……」


「「「そんなのダメーーー!!」」」


いきなり後ろから大きな声がして振り向くと、そこには薫、結衣、そしてぷんぷん顔の新菜が水着で立っていた…

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