第25話 お仕置き
結局のところテストの結果はというと勇樹の全勝だった。
普通であれば薫が1位だったに違いない。
勇樹が全科目で100点さえ取っていなければ……
「これで私の全敗ですわね。なんだか清々しい気持ちです」
「薫だって全科目90点以上ならすごいじゃないか」
最近ではクラスで見慣れた光景の休み時間の薫の訪問だ。
「約束通り一生ご奉仕いたします」
おい!勝手に罰ゲームの内容変えるな。
クラス中が注目して見てるじゃないか。
「すごい弱みを握って奴隷のように扱うらしいよ」
「鬼畜だね」
一部の外野が勝手な噂を流してるようだ。
クラスを見回していると結衣に目がいく。
なんだか最近休み時間元気がないな。
最近はお弁当を食べる時以外あまり俺の方へとやって来ないのだ。
なんだか少し寂しいな。
勇樹がクラスでボッチしている時も結衣はあの笑顔でずっと近くにいてくれた。
考えてみれば最初に出来た友達なんだよな。
お昼休みに悩みでもあるのかちょっと聞いてみよう。
ーーお昼休みーー
「なあ結衣最近元気ないな?どうしたんだ」
「私なんかじゃダメなんだよ……新菜ちゃんも薫ちゃんも私とは全然違う。私じゃ釣り合わないし……敵わない」
なるほど。友達として自分は劣っているから釣り合わないと悩んでいるのか。敵わないってのはわからないけど。
「なに今さらそんな事言ってるんだ?お前は新菜でも薫でもないんだ。結衣にしか与えられないものだってあるんだぞ。いつもの笑顔は俺も元気をもらってる」
「じゃあ……まだ望みあるかな?」
「結衣が望めば(友達なんて)手に入れられないものなんてないだろ。頑張れ!」
俺も少しだけ成長したもんだな。結衣は決意の表情を浮かべると、
「勇樹くんこれからもよろしくね」
最高の笑顔を見せてくれた。
なんだか地雷を踏んだ気もするが、元気になって良かった。
それから放課後までの休み時間は大変だった。
薫と結衣が取っ替え引っ替えいろいろ俺に絡んでくるからだ。
放課後には俺はヘトヘトだった。
靴を履き替えようとしてる間もふたりが俺にぴったり張り付いている。
校門では新菜が待っていた。
「ずいぶんお楽しみのようだねお兄ちゃん」
な、なんだか怒ってない?
「こいつらどうにかしてくれよ」
なぜジト目で俺を睨むんだ妹よ……。
「自業自得です。結衣さん薫さん少しお兄ちゃんに大事な話があるので今日のところはこれくらいにしてください」
いつもより低い声で伝えると、ふたりも空気を読んでまた明日と言って足早に帰っていった。
「お兄ちゃんにお仕置きだからね。ちょっとショッピング付き合ってもらうから」
「お仕置きって俺なにかしたか?」
「わからないなんてほんとプンプンだからね!」
怒り方はいつものように可愛いがお仕置きがあるなんて嫌な予感しかしないな。
いったい何を怒っているんだろう?
少なくても親しい友人がふたりも出来たのに……。
それから新菜は無言のまま電車に乗ってお台場へと到着した。何か話してくれよ……。すでにこれがお仕置きなんじゃないか……。
「ここでちょっとお茶しよ」
そこはパンケーキで有名なお店だった。
店内は若い女子でかなり混んでいる。
注文が終わると新菜が話出した。
「私のクラスまでお兄ちゃんの噂が流れてきたよ。あのミスターゼロがハーレム作ろうとしてるって。休み時間のたびに、生徒会長を教室に呼んでるって。そんな本命がいるのにクラスメートには、お前も望めばチャンスはあるぞみたいな事を言ってるって。どーゆー事かな?」
「え?ええええええーーー!」
思い当たる節も無いわけではない。
でもそんなつもりは一切ないのだ。
「休み時間のたびにとか本命ってどーゆー事かな?望めばチャンスあるってどーゆー事かな?」
言い訳しても仕方ない。俺が誤解を招くような行動をしていたのは事実だ。
「私もお兄ちゃんからそんな事しないのはわかってるよ。でも……お兄ちゃんが他の女の子にくっつかれてたりするのはいいは気しない。お兄ちゃんも私が男の子とイチャイチャしてたり付き合ってない人にべったりされててもいいの?」
これにはガツーン!と来た。
新菜に男が引っ付いていたらと想像するだけで耐えられない。
「新菜が逆の立場だったら俺は耐えられない。ごめん……」
「わかってもらえたならいいの。でも彼女と友達の区別はつけないと節操がないと思われちゃうからね」
俺が反省している姿を見て新菜は言った。
「妹にあんまり妬きもち妬かせないでね」
そしてニコっと笑う。
ちょっと友達が出来て有頂天になっていたのだろう。
友達だからこそはっきりした態度が必要な時もある。
結衣の仲間の件で俺が言っていた事だ。
「新菜はほんとに大人だよな。叱ってくれてありがとう」
「大人じゃないよ。大人ならこれからするお仕置きはしないから」
「何をさせる気だよ」
新菜は自分の隣の椅子をぽんぽんと叩いて俺に座るように促す。
ま、まさか……
注文していたパンケーキがやってくると『あーん』と口を開ける新菜。
言っておくが周りはいつの間にか全員若い女子だけになっていた。
「じゃあ勇樹くんもあーんして」
ゆ、勇樹くんてなんだ!?なんで頭を俺の体にもたれてくるんだ!?
店中の女の子達が俺を見ている。
何か囁いてる。目立つ事が大嫌いなのに。
「こ、これもさっきの話の流れからダメなんじゃないか?」
「何言ってるの?一生甘えられるのは妹の特権だよ」
家でもないのにくっつき過ぎだ。みんなが見てるだろ。
今日は甘えたい放題の新菜だった。
対照的に勇樹の方はというと人前では節度を持って行動しようと誓うのであった。
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