第24話 勝負の結果
今日からテストの結果が返ってくる予定だ。
少し面倒なのが薫からの提案でテスト結果が出る事に、休み時間に教室に行くから点数を記録しましょうってことだった。
クラスも違うし大変だと思うんだが・・・そこまで勝負にこだわるなんて尊敬に値するな。
最初のテスト結果は英語だった。
「次、如月くん。よく頑張ったね」
なんだか褒められると嬉しいって気持ちが少し芽生えて不思議な感覚だ。
今までの勇樹は他人への関心もなく新菜に関すること以外自分の感情もほとんど出したことがない。
小さな頃はたくさん笑う元気な男の子だったらしいが、なぜかまったく覚えていなかった。
1時限目が終わるとすごい勢いで薫が教室に入ってくるなり俺の机へとやってくる。
クラス中がざわめいている。
それもそのはず、あの男嫌いで有名な生徒会長が満面の笑みを浮かべて勇樹のもとへ走ってきたのだから。
「テストの結果はどうでした?」俺にそんな笑顔を向けるのは新菜だけなんだが、楽しそうだな。
もっと・・こう・・なんていうか・・勝負じゃなかったっけ?
クラスの連中に知られるのもなんだし答案用紙を見せる。
「すごーい!ひゃ・・ぐふん」
大きな声で言いかけたので咄嗟に薫の口を手で塞いでしまった。
よほど苦しかったのだろうか。顔がみるみる赤くなっていく。
しかし手をどけようとしてるのだろう。俺の手の上から自分の手を重ねてくる。
なんだか変な状態?と思った矢先、結衣がものすごい力で二人の手を引き剝がした。
「なにイチャついてるの!!」
「誤解だ結衣。薫は手をどかそうとしていただけだ」
「大きな手だった・・・じゃなくて。そ、そうよ。そうに決まってますわ」
結衣がジト目で睨みをきかせてくる。
今日もやはり不安定か・・・・。
「でも勇樹さんすごいですわね!」
対戦相手を褒められるなんて器が大きいな。新菜の兄として見習わなくてはな。
「薫はどうだったんだ?」
「私は国語が92点よ。頑張ったんだけどな」
「いい点じゃないか。科目が違うし夕方まとめ・・」と言いかけたが、
「あ、ありがとう。次も休み時間来るわね」
嵐のように去っていった。
その後はクラス中が大騒ぎである。
薫と俺が呼んでいたことはもちろん、勇樹さんと呼びながら親しげに話す生徒会長。
生徒会長はむやみやたらに笑顔など作らないので有名なのだ。
さらに休み時間もまた来ると言い残していた。
ひょっとして生徒会長の男嫌いや氷河期が終わった?などと噂している。
みんなの憧れだけの存在から身近な存在になったのかもと一部の男子が喜んでいた。
「次に天城さんが来たら話しかけてみよう!」と密かに想いを寄せていた男子生徒がいきりたっていた。
ちなみに結衣は英語のテストが47点でかなり落ち込んでいたのは言うまでもない。
2時限目が終わると再び薫が姿を現した。
数名の男子生徒が薫へと向かっていくが・・・・・
「そこをどいてくださるかしら!あなた達に用はありません!邪魔しないでください!」
容赦のない言葉が男子生徒たちに浴びせられ、灰のようにさらさらと去っていった。
「休み時間が待ち遠しかったですわ」声色も表情も変わり先程以上の笑顔だ。
勝負へのこだわりからそんなに待ち遠しかったのか。さすが生徒会長といったところだな。
乙女心が理解できない残念な勇樹であった。
テストの話題の為か、結衣がいつものような元気がない。勉強が苦手なのだ。
しかも薫の積極的な姿勢に圧倒されてしまっている。
「今回私は英語で90点でしたので私の負けですわね」
なんだか負けて嬉しそうに見えるが・・・気のせいだろう。
「こっちは数学でこんな感じだった。」
100点の答案を見せる。すると薫はにっこりと微笑む。
なにか秘策でもあるのか?
俺の点数が高いのを心から喜んでくれてるような気がする。
実際勇樹の気のせいではなかった。
薫の家は由緒正しい家柄である。
その為、自分よりも下等な生き物が釣り合うわけないといままで思っていたのだ。
しかし勇樹は容姿も知能も運動神経も今まで見てきた男性の中でずば抜けている。
そして前回のテストで負けたことを知ると、今回は自分の人生全てをかける相手としてふさわしいか確認のために本当は勝負を仕掛けてきたのだ。
新菜と勝負できないからと言ったのは勇樹が妹のことになると必ず勝負を受けてくれると思っての口実に過ぎなかった。
『私の生涯の全てを・・・・』
天城薫お嬢様は本気で勇樹に惚れてしまったのだ。
人生をかけた初恋なのであった。。。
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