第20話 特訓

「じゃあこれから特訓するよ!」


家に着くなり新菜が言い出した。

成り行きとはいえ勝負する事になってしまったのだ。仕方がない。


「私の教えがまだ甘かったみたいだから」

「ん?勉強なんか教えることはあっても教わってないぞ?それに甘いってなんだよ」

「勉強の特訓なんて一言も言ってないよ」


新菜の言ってることが全く理解できない。

これから勝負だというのに勉強以外で何の特訓だよ?


「お兄ちゃんはだいぶ人に関心が出てきたみたいだから第二段階へ移ります」


なにが始まるのか怖いんですけど・・・


「女性への抵抗力をつけましょう!」

「抵抗力ってウイルスじゃないんだか・・・」

「つけましょう!はい!?」

「つ、つけましょう!」


またこのパターンか。。。。


「今日の天城先輩の体を見るお兄ちゃんの目がダメダメでした。あれではいつか女性に誘惑されて騙されてしまいます。私しか見ちゃダ・・・簡単に誘惑されたらいけません」


誘惑されてないし・・それにいま私しか見ちゃダメって言いかけたよね?言い直したよね?

そもそもお前の水着が刺激が強すぎたから、お前の責任な気が・・・なんて言える訳ない。


「女性と意識せずちゃんと話ができるようにまずは特訓です」

「わかった。任せるよ」


俺の為に一生懸命でほんとに可愛いな。

実は勇樹の為だけではないのだが疑いもしない。


「じゃあまずは目線を外さずしっかり相手の目を見て30秒キープ」


え?なにそれ?男子はみんな高校入学のときにこれやってるの?

やってるはずがない。きっと勇樹だけであろう。


勇樹と新菜は見つめ合う。

なにも話さず10秒たったところで顔が赤くなって新菜が目線を外してしまった。


「な、なかなかやるじゃない」


おいおい今10秒くらいだったし俺は目線外してないぞ?まあ可愛い妹ならずっと見ていても飽きないから楽勝だな。


「じゃあ次は、か、顔をギリギリまで近づけて見つめ合ってみよう。キスするみたいに!スタート!」


『キスだと!?なんだか新菜がもじもじしてるが、後半はやたら早口で言ってきたから従ってしまった。

さ、さすがにやばい。よく見ると長いまつ毛にはっきりした大きな目。ほんとアイドルみたいだ。え!!!なんで見つめ合うはずが目をつぶるんだ!?』


勇樹はパニックになっている。

新菜もパニックになっている。

少し変わった兄と妹なのかもしれないが、お互いに大好きすぎるのだろう。


『わわわ・・。つい目を閉じてしまった・・。今日のお兄ちゃんを見て妬いてしまって、勢いでこんな事始めたけどこの先どうすればいいかわからないよ・・』


勇樹はさすがにキスしようとは思わず視線を下に向けるとさらに不幸?幸福が。


顔を近づけているため視線を落とした先には新菜の胸元が丸見えになってしまっている。

これ以上は我慢の限界で無理だと勇樹は思った。


「スマホが鳴ってるな。友達からかも」

新菜は嘘だとすぐにわかったが、私の暴走を止める為の兄のやさしさがうれしく思う。


「しょうがないな~。友達いないんじゃなかった?」

「あ。そうだった」


ふたりして顔を見合わせて自然に笑いあっていたが、存在を忘れられている結衣が寒気がしたのを二人は知らない-------。


そして勝負は大丈夫なのだろうか?

テストは来週に迫っていた。

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