第19話 勝負
終わった……新菜に誤解されてまた泣かせてしまう。
勇樹がやましい事はないので言い訳せずに話をしようと思ったところで新菜の方から話始めた。
「天城先輩がなぜ兄を連れ去ったか、だいたいの予想はつきます。私と勝負が出来なかったからですよね?」
「やっぱり頭の回転が早いわね」
不適な笑みを浮かべている。
「そう。あなたとの勝負は出来なかったけど……如月勇樹が相手してくれるわ」
どうやら新菜とすでに因縁があったらしい。
新菜の入学の際に学校中で噂になったのが、この高校はじまって以来の天才で一番の美少女が入学してくると。
当然それは天城薫の耳にも入る。
生まれてから一番にこだわってきた天城薫にとって、当然高校でも一番の美人であり成績優秀である。
それがいきなり2番にされるのは許せなかった。
入学して早々に新菜に勝負を挑もうとしたものの、学年は違う為に成績勝負は出来ない。
人気勝負は他人が決める曖昧な評価。
結局、勝負は実現しなかった。
そこへ突然舞い込んできた情報は、兄の勇樹が自分よりもテストの順位がうえだった。
そして初めての敗北……しかも男性……。
人生で初めて自分を負かした相手がどんな男か興味もあり、強硬手段を取ったのである。
「それで……なぜ条件が、付き合うとか体を……その……なんですか!」
「私より上の男がいる訳ないからよ。今までもこれからも……」
ここで勇樹が割って入る。
「じゃあ俺は負ける訳にはいかないな」
「そんなに私の体に興味があるのかしら?」
挑発されても勇樹は冷静だった。
「新菜の絡んでる勝負だと聞いた以上、俺は絶対に負けない」
「とんだシスコンね。まぐれで前回テストに勝ったからっていい気にならない事ね。それにあなたのようなオタクっぽい外見は好みじゃないしカッコつけても様にならないわよ」
「どうせ俺はキモイかもしれないが、大好きな妹の前ではかっこいいお兄ちゃんでいたいからな」
新菜の顔がみるみる赤くなっていく。
『大好きって……私もだけど……』
あくまでも兄と妹である。多分……
「じゃあお兄ちゃんが勝ったら、天城先輩じゃなく私がご褒美になってあげる」
おいおい……私がご褒美って日本語ですか?
まさか自分にリボンつけてどうぞ……みたいな?
妄想が止まらない勇樹だった。
ちなみに結衣はまったく話には入れず、ポツンと取り残されていた。
連れ去られてすぐに、新菜に連絡したのは自分なのに……
「それと、天城先輩シャツのボタン止めてください!胸がほぼ見えてます……兄を誘惑しないでください!」
結衣もボタンを外そうとするが、勇樹はまったく気にしようとしなかったのでやめた。
「きゃっ!私こんなことした覚えないわよ!」
「いやいやいや、俺がする訳ないだろ!催眠術士か!」
やっぱりこいつ思い込み激しいな。
「ではせいぜいギリギリまで勉強する事ね。ご機嫌よう」
言いたい事だけ言ってさっさと行ってしまった。
ようやく結衣は喋っていいのかと思い疑問を投げかける。
「結局……勇樹くんが勝ったら生徒会長も新菜ちゃんも手に入れるって事?賭けになってないような……」
「「あっ」」
しばしの沈黙。
「でも俺が勝ったら友達になるって条件を俺は出した」
「「えっ!」」
なになにまずかったの?
「そ、そう。友達増やすように言ったの私だしね」
声が震えているぞ新菜。
「じゃあ勇樹くんが負けたら私を自由にしていいよ」
さらに面倒な事を言ってくる結衣だった……
お前はそもそも関係ないだろ。
疲れたお昼休みであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます