第17話 謎の美人

まだまだ梅雨も明けず憂鬱な天気が続く。


「梅雨明けたら海行く約束忘れないでね」

「そ、そうだな」


今朝は新菜と一緒に登校中である。


やばい、海と言われるだけで妹の水着姿が脳裏にちらつくなんて異常だろ。

無意識に新菜をチラチラ見てしまう。

水着の試着に付き合ってから俺はいったいどうしたんだ?


勇樹は今まで『ミスターゼロ』と呼ばれるくらいやる気も他人に関心もなかった。

重度のシスコンではあったが、異性への興味も全くなかったのだ。

当然のように初恋など高校生になっても経験すらしていない。


それが先日の新菜の水着の試着を見てから変化が起きている。

天使のように可愛がってた妹であっても、すでに女性の体つきになった姿を見てから妙に意識してしまうようになった。

それは新菜の体に興味があるわけではなく、健康な一般高校生男子が異性に興味が出るきっかけになりつつある。


「新しい水着でお兄ちゃんを悩殺しちゃうかもよ」

「ほんとそうだな」

「えっ!?」

「えっ!?いや」


やばい本音が駄々洩れだ。

新菜の奴は真っ赤になってる。でも嬉しそうだけど・・・・。


新菜はそんな勇樹の変化に気付いていた。

以前はいかにも妹扱いだったが、最近は家でも女性的に気を遣ってくれることが多くなったのだ。


結衣と3人で傘をさして帰った際も、わざと反応を確かめたくらいである。

ただし結衣にも反応した事に少し不満があったのは言うまでもない。


「じゃあまたね」


新菜はわざとウインクして髪をなびかせる。


「あ、おう」

「うふふ」


髪から漂ういい香りに夢心地になりながら返事をする勇樹。

これが動物の発情期なのか!俺は妹に発情してしまうところだぞ!


下駄箱で靴を履き替えていると、見知らぬ美人が近づいてくる。

いったい誰だ?


「あなたが如月勇樹ね」


初めてフルネームで呼ばれたがなんなんだ?

いったい誰なんだ?


「そうだが何の用だ?」

「私と勝負なさい!」


なんだ?この状況は?

いきなり勝負ってこいつ頭大丈夫か?

そもそも何の勝負するっていうんだ?


「やだ。面倒くさい。俺にメリットがないし勝負する理由もない」

「私が万が一でも負けたら、私と付き合わせてあげるわ」

「興味ない。なんで上から目線なんだ?」

「えっ!何言ってるの?私が付き合ってあげてもいいって条件なのよ!」


なんだこの偉そうな女は?

よし!久しぶりにスキル発動だな。

なにもなかったようにスルーして教室に向かった。


遠くから「待ちなさ・・・」と聞こえてくるがスキル発動中の勇樹には届かなかった。



「ここ重要だからテスト出るかも知れないよ」


英語の教師がポイントを言っているのか。

そういえば、もうすぐ期末テストか。珍しく勇樹は起きている。


「もうすぐまたテストだー!!!あー!やだー!」


お弁当を食べながら結衣が頭を抱えている。


「普段ちゃんと勉強してるのか?」

「授業中寝てる人に言われたくないわよ」


結衣が勇樹へ反論する。


そんな話をしていると、教室のドアが勢いよく開き朝の美人が勇樹の腕を掴んで連れ去って行った。


「あわわわわーーーー!」


結衣が驚きのあまり変な声を出す。そして追いかける!!


行先は保健室だった。保健室の先生はお昼休みで不在らしい。


おいおい何が始まるんだ?

保健室で男女ふたりきりってやばくないか?

しかも誰かも知らないのに。


新菜にばれたら泣かれるだけじゃすまないぞこれ。。。


誤解されるのは嫌だから誰も入って来ないでと願う勇樹であった・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る