第13話 らぶらぶデート2

命からがら!?逃げて来たふたりだった。


「なんで逃げるの?」

「せっかくのデー……いや友達と一緒だったみたいだしな」


面と向かってデートというのは恥ずかしすぎる。


逃げて来た先は上の方が丘になっている公園だった。


色とりどりのバラが咲いている。


「今の時期はバラ園やってるんだね。綺麗〜。私とどっちが綺麗かなぁ?なんて!?」


ちょこっと舌を出して笑う新菜はほんとに天使だった。


周りのカップルの男子達が悩殺されて、喧嘩になっている。


「こんなにきれいなバラがたくさん咲いてるのに、なんだかみんな揉めてるみたいだね」


いやいやお前のせいだろうと思うが、


「バラとか美しいものにはトゲがあるからな」


でも新菜には全然ないからね。……なんてとても言えねー。


しかしあの笑顔は俺にだけ向けてるんだよな〜。


家にいる時とは比べ物にならない破壊力があった。


丘の上から見る景色は本当に最高だった。


遠くにはベイブリッジが見渡せて、海は太陽が反射してキラキラと輝いている。


「夏は一緒に海に行こうね」


唐突に新菜が言った。


「俺となんかでいいのか?友達と行かないのか?」

「お兄ちゃんとがいい。うふふ。水着選びも手伝ってね」


「「「えーーー!」」」


おいおいなんでお前らが驚くんだよ。誰だお前ら?

っていうか話聞いてたのか?


彼女達が睨んでるぞ!

俺も睨まれてるし……


実際は勇樹に熱視線を送ってるだけだったのだが。


「どうかした?」

「水着選びは恥ずかしいと思っただけだよ」


想像するだけで心臓が飛び出ちゃいますはい。


「私も少し大人になったからね!えへ」


ポーズを決める新菜さん。


バタバタ倒れるその他大勢のみなさん。


鬼のような顔の彼女さん。


ここは天国と地獄の狭間の世界なのだろう。


そろそろご飯を食べに行こうかと思った矢先、


「写真撮ってもらえますか?」


カップルの彼女の方がスマホを持って言って来た。


「いいですよ」


新菜が笑顔で答えると予想外の事が起こってしまった。


「ではお願いします」

「え?え?」


なぜ俺の隣に彼女が来るの?

スマホは彼氏が構えてるし、新菜は目が点になっている。


「ありがとうございました」

「今度は……」

「「「ダメ!!!」」」


俺と新菜と彼女が同時に言って、彼氏はしょんぼり去って行った。


「ビックリしたな?」

「…………」

「どうした?』

「…………」


オッケー出したの俺じゃないけどここは大人になろう。


新菜の手を取り指と指の間に挟み込み手を繋ぐ。妹とこの繋ぎ方はかなり恥ずかしい。


顔はデレ顔なのにほっぺをまだ膨らませている。

怒りたいのか照れたいのか…少し笑ってしまいそうだけどやっぱり可愛いなぁ。


「もう!デート中に他の女子と写真なんてぷんぷんだよ!」


は〜萌え死にしそうだ……


「私が返事したんだけど……やっぱりぷんぷんだ!」


手を握ったままさらにもう片方の手で頭を撫でる。


「ぷん……」なにか言いかけてうつむいたが「いこ!」


手は繋いだままようやく許してもらえたようだ。


「じゃあ食べ行くか!」


また赤いレンガ作りの倉庫に戻って来た。


ここでは世界一の朝ごはんにも選ばれた事のある、『リコッタパンケーキ』の美味しいお店があった。


2人でパンケーキ1つとサラダとドリンクなどを注文する。


パンケーキがくるとちょっといたずらしてみたくなってしまった。


「はい、あーん!」


新菜へパンケーキを食べさせようとする。


目がうるうるしながら口を開ける。こっちが恥ずかしくなってきた。


「じゃあお返しにあーん!」

「えっ!」


想定外の仕返しを受ける。

周りの男性も口を開けて間抜けな表情をしている。


優越感が羞恥心に勝りゆっくり美味しく頂く事が出来た。

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