第12話 らぶらぶデート

『勢いで妹をデートに誘っちまった。。。しかもなんで。。。』


勇樹は現在デートの準備中である。


清潔感のあるTシャツに見栄えするジャケットを着て、髪をセットしているところだ。


長い髪を後ろで束ねて前髪を少しだけ垂らし、美少年の顔が全開になっている。


準備が終わると歩いて駅前の噴水へと向かった。


噴水前ではとびきりの美少女が待っていた。


「どうして駅で待ち合わせなんだ?」

「そこはごめん待った?じゃない?」

「うっ・・・ごめん待った?」

「ううん、いま来たところ!」


『やばい。か、かわいい・・・妹だけど』


なぜこんな事になったかというと、新菜がせっかくなら服装も髪もばっちり決めてデートっぽく駅で待ち合わせしたいって言ったのだ。


「お兄ちゃん超かっこいい!ここまでいつもと違うと他の人にはお兄ちゃんて分からないね」

「そうか?じゃあ横浜にいくか。しかしやたら視線を感じるけど気のせいかな」


気のせいではない。美少女がひとり待っている時でも目立っていたのが、さらに美男子の登場である。

ふたりが並ぶともはや撮影でもしてるのかとさえ思われている。


「じゃあいくか」

「うん!」


目的地の横浜に到着すると、まずは赤レンガ倉庫を見て回る。

レンガ造りの倉庫風の建物の中にはいろいろなショップやレストランが入っていた。


「この指輪かわいい」


お前のほうが可愛いよ・・・なんて妹に言える訳もなく


「うん似合うしいいじゃないか」

「そ、そうかな」


前にも言ったがふたりは兄と妹である。

しかし周りの人々は2人を見てため息をもらす。男女ともに目がうつろになっている。


今日の勇樹は服装も髪形もしっかり整っているので当然だった。


今度は海沿いを歩きながら中華街へと歩いて行くと、なぜか2人の少し後をぞろぞろとついてくる。


ここでもやはりモデル?撮影?と言いながら魅力ある2人をもっと見ていたくて無意識について行っていた。


「なにかこっちにあるのか?みんな同じ方面に向かってるようだけど」

「中華街方面も人気があるからね」


そんなわけねーだろ!と突っ込みたいところではあるが、

後ろを気にしつつまったく気付いてない平和な兄と妹だった。


「やっぱりたくさんお店があるね。あ、あれ食べたい!」


有名な杏仁ソフトクリームらしい。


「食事前だし、1つだけな」


勇樹はそう言って会計を済ませたが、まてよ?と思ったが遅かった。


スプーンももらわずふたりで一緒に食べるのである。急に顔が火照ってくるのが自分でもわかる。


横目で新菜を見てみると、恥ずかしそうにうつむき加減でこちらをちらちら見ている。


「「ほんとに恋人みたいだね」」


同時に言ってしまった。これはお互いにたまらない・・・。

冗談を言ってごまかそうとしたら被ってしまうなんてさらに恥ずかしいプレーだった。


代わりばんこにソフトクリームをなめて恥ずかしがっているふたり。


それを見て「キャー!」とか「はぁ~」とか言っているギャラリー!?


中華街ってそんなところではなかったはずだが、不思議なピンクの空間が出来上がっていた。


今度は焼き小籠包を食べることにしたらしい。


「なんだか食べ方があるらしいぞ?たまに火傷する奴もいるらしい」


ちょうどお店の前に来ると


「あっちちちち!!!」


なんだか見たことがある少女が何も考えずに横からかぶりついて、スープが顔まで飛び散っていたところだった。


「結衣ちゃん?」

「ほえ?」


まだ口が熱くてまともな返事もできない結衣だった。


「見なかったことにしよう」と新菜の手をひっぱり走って逃げる勇樹だった。

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