第8話 ランチデート

「やっと終わったね」

「ああ。さすがに頭使うと疲れるな」


テスト最終日の為、午前中でテストが早く終わり珍しく新菜と一緒に下校する勇樹だった。


「じゃあレストランにlet's go!」


テストが終わったら美味しいランチでも食べに行こうと約束していたのである。


「明日からの球技大会の為にも栄養補給だね」


いつもにも増して機嫌がいい新菜だった。


兄と外食出来るのが嬉しくて仕方ないのである。


「家で着替えてくれば良かったかなぁ〜?」

「うちの学校の女子の制服は可愛いし似合ってるからいいんじゃないか?」

「そ、そうかな?」


東京都内でも有名な進学校であり昔は女子校だった為に、他校からも人気の制服だった。


人気の制服に最高の美少女の組み合わせ。

目立たない訳がなく通り過ぎればみんなが振り返る。


「高校生活は楽しんでる?」

「お兄ちゃんと同じ学校だからすごく楽しいよ」


『うわぁ。俺の心を鷲掴みだよ』

『きゃー大胆に言っちゃった』


ふたりでデレデレしているが、一応言っておくが兄と妹である。

恋人のようにいちゃつきながら到着する。


高級ホテルの高層階に位置するレストランである。

両親が帰国するといつも家族で個室で食事する為、常連だった。

普通であれば高校生だけで食事するには場違いであろう。

両親の力は絶大だった。


「如月様お待ちしておりました。」


支配人自ら笑顔で対応して席へと案内された。


食事はコース料理でどれをとっても美しく上品な味である。


食後のデザートと紅茶を飲んでる時に真剣な顔をして新菜が言った。


「お兄ちゃんがモテてしまうのは嫌だけど、悪口言われるのはもっと嫌だから……いろいろごめんね」

「謝る理由はないだろ。俺が自分で好きでこうなったんだから」

「でも……」

「もともと面倒な事は嫌いだ。でも新菜を泣かせる俺はもっと嫌いだ」

「ありがとう。お兄ちゃん大好き!」


勇樹は嬉しすぎて声も出なかった。


「新菜の方はその……またモテてるのか?」

「モテてるかは分からないけど、告白は少しされるかな。もちろん断ってるけど」

「やっぱりな……」


実際は入学してから毎日のように告白されていたが、内緒らしい。


話題を変えようと新菜が球技大会の話をする。


「明日から球技大会だね。サッカーに出るんでしょ?結衣ちゃんから聞いたよ」

「そうなのか?聞いてないけど。まあやる気はないけどな」

「少しくらいならかっこいいところ見たいな〜。なんて冗談。冗談」


『少しやる気出てきちゃったんですけど……我慢するか』


でもやっぱり妹にはいいところは見せたい勇樹だった。

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