第7話 同盟

いつものように2人で朝食を食べている。


「昨日はコソコソ2人でいったい何を話していたんだ?」

「ん〜今度ショッピングでも一緒に行こうかとか?」

「ずいぶん仲良くなったもんだな」


『お兄ちゃんごめん……』


心の中で呟いた。


話は昨日に遡る……


「お兄ちゃんの顔見ましたね?」


その後の話はこうだった。


「結衣さんは顔を見て兄の事が好きになってしまったんですか?」

「助けてもらった時から気になって……お昼に一瞬見えた顔にある意味一目惚れ?みたいな……えへへ」


しまりのない顔である。


「えーー!!まさか他の人には見られてませんよね!」

「だ、大丈夫だと思うよ?なんで?ダメなの?」


新菜はやれやれと素人を見る表情だ。


「ずいぶん余裕ですね?あれだけ兄を馬鹿にしていた連中が、顔を見ても誰も見向きもしないと思いますか?

他の女子に取られてもいいんですか!」

「ヤダ!ヤダ!絶対ヤダ!」

「でしたら同盟を組みましょう」


内容は次の通りだった。


①絶対に他の女子に顔を見られないようにする事。

②極力他の女子を近づけない事。

③勇樹に変化があったらお互い情報交換する事。

④本人に美少年だと気付かれない事。

などだった。


「でも新菜ちゃんは妹だし、別に誰かと付き合っ……」

「今までずっと私だけのお兄ちゃんだったのです。今回は特別に譲歩しているのですが?」


可愛い顔の目の奥には冷たさが見え隠れしている。


「う、うん秘密は守るから大丈夫!」


こんな感じだったのだ。


「じゃあ今度俺も連れて行ってくれよ?」


妹と一緒に出かけたくて仕方ないのである。


想定していなかった言葉に思わずビックリな顔。


『シスコン丸出しで引かれたか!?』


勇樹も同じく焦っていた……



朝のホームルームでは、もうすぐ行われる中間テスト後の球技大会の種目別のチーム分けが行われていた。


普段はくじ引きで適当に行われるが、3年生という事で思い出に残るように優勝を狙うようである。


『面倒くさいな……』勇樹は眠りに入る。


半分が決まり残りを決めようとした際に誰かが言った。


「ミスターゼロをどうする?」


寝ている勇樹をみんなが見るが熟睡中。


サッカーかドッジボールなら人数が多いし足を引っ張られても大丈夫じゃないかと言う事に。


ちなみに競技はというと

サッカー、バレー、バスケ、ドッジボールだった。


「じゃあサッカーだな、パスしなきゃ害はない」


ほんと酷いクラスメイト達だと結衣だけ思っていたが、嬉しい誤算もあった。


サッカーが一緒でバスケはお互い補欠で名前が書いてある。


種目に最低1競技はフル出場、エントリーは2競技しなくてはいけなかった。


バスケ部所属の男女がブーブー言っていたが、補欠なら出場しなくてもいいしと丸め込まれた。


後にこの球技大会で波乱が起こる事は誰も知らない……


1週間後にまず中間テストが開始された。


新菜がテスト勉強をまったくしないのは当然といえば当然なのだが、勇樹も同じくテスト勉強などしない。


最初のテストの英語が終わると結衣は叫んでいた。


「私は日本人だーーー!」

「アイ ドント スピーク イングリッシュ!!!」


どこからか突っ込む声がしてきた。


「猿が叫んでるな」

「ちょっと誰……あっ!ヤダ勇樹くん……」

「勇樹って誰?」


みんなには当然分からなかった。


テストが終わり放課後


「さっきのあれ酷いよ〜」


なんだかクネクネしている。


「トイレ早く行って来いよ」

「???」


本人はクネクネに気付いていない。


「お互い勉強ばかりが人生じゃないよね」


「何言ってるんだ?勉強は大事だぞ?」


「建前とかも言うんだね〜」


テスト1日目が終わった。




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