第3話 断れない女子
断れない女子...ではなく彼女の名前は『藤崎結衣(ふじさきゆい)』。
彼女はクラスの男子の中でもかなり人気があった。
小柄ではあるがショートヘアで元気いっぱい。
みんなに愛想がよくいつも笑顔。実際可愛い。
「クラスではこんな感じのイメージか?でも3日間見てきて俺には違って見えたぞ。」
どんな事にも無関心でいつもボッチだった勇樹だからだろう。
クラスメイトの名前も顔も人間関係もまったくわからなかった。
「みんなにはいつもの光景でも俺には全てが新鮮にそして鮮明に見えた。その中でひとりになるといつも『はぁ~』、とか『ふぅ~』とか繰り返してる奴を見つけてな~」
新菜がなぜか耳が赤くなっている。
結衣は完全に顔が真っ赤になりながら「なっ!?なに誤解するような言い方・・・」
「お産でもしてるのかと思ったぞ?」
「ぎゃああーーーーー!!」
結衣は半狂乱になっていたが、新菜はうつむいてしまった。頬を赤く染めて。
結衣少し落ち着いてくると自分の事を話だした。
中学生の時にクラスでは順番にいじめのような事があり無視されるようなことがあったこと。
やがて自分にもそれはやってきて、そのきっかけがショッピングに誘われた際に、テニス部の試合があって一緒のショッピングを断ったことが原因だった。
「それからは相手に合わせて話をしないといけないんじゃないか?とか誘いを断ると仲間外れにされるんじゃないか?とかミスターゼロの悪口にのっからないと嫌われるんじゃないか?とかいろいろ怖かったの。」
「はい!最後のは余計です。」
俺より早く新菜が結衣に突っ込んでいた。さすがわが可愛い妹だ。
「無理をしていてはいつか心が壊れてしまいますよ。」
天使が優しく結衣に微笑む。
「きっと私のお兄ちゃんが断れないループから助けてくれますから!ねっ!お兄ちゃん」
「任せておきなさい!」
「ほんとに?ミスターゼロが?私とは対局な人だから不安なんだけど・・・」
「それでおまえの名前なんだったっけ?」
「言ったよね、私最初に言ったよね。うんやっぱりミスターゼロだね。結衣だよ。ゆ・い!」
遠くを眺めながら結衣は答えた。これも断ってもいいんじゃないの私と思いながら。
そして次の日の朝。
学校へ行くと結衣は当然グループのみんなから問い詰められる。
「昨日あれからどうなったの?」
「ミスターゼロとどんな関係なの?」
「まさか付き合ってるとか?」
「今日はどんなパンツ履いてるの?」
どさくさに紛れて誰か変な事を聞いてる気がするがそこはスルーしてーーーー
「妹さんの事で相談があるって言われて。」
「なにそれ〜!ミスターゼロが相談とか超ウケる。」
俺もそのお面みたいな厚化粧超ウケるんですけど。
勇樹は自分の机で寝たふりをしながら心で呟いた。
そしてお昼休み。
いつものように結衣はみんなから飲み物を買ってきてと頼まれている。
「俺はお茶!」
「私ミルクティ!」
「じゃあオレンジジュース」
「ソルティドック!」
「誰?カクテル頼んだの!」
クラス中が俺を見ている。
特殊スキル『空気』も効かないらしい。
「じゃあコーヒー」
俺が答えると、結衣は固まった。
「ちょっとなに勝手に頼んでるの!」
リーダーっぽい女子が喚いている。
「何でお前の許可がいるんだ?便利だなと思って。」
「友達だからじゃん!結衣も嫌だよね?」
「だから何でお前が人の気持ち語ってるんだ?」
「・・・もういいからみんなで買いに行こう。
超ムカツク!」
教室は全員が
一般ダークスキル『見て見ぬふり』を発動していた。
そして放課後。
厚化粧のマスクレディーが仲間を連れて勢いよくやってくる。
「ちょっとミスターゼロ!お昼のあれはなによ!」
「おいおいカロリーオフのコーラみたいな呼び方やめてくれよ。」
「馬鹿にしないで!結衣ともう関わらないで!迷惑だから。」
「さっきも言ったがお前と関係ないだろ?」
「結衣は仲間だから!」
俺はゆっくりと話す。
「いつもなにか頼むのが友達なのか?」
「仲間だったらそんな事もあるじゃない!」
「一方的に頼むのが仲間なのか?それじゃメイドや奴隷と一緒だな。
楽しい事、悲しい事、辛い事も一緒に分かち合うのが仲間だろう?
ノーと言えない日本人はたくさんいるが、藤崎はいつもびくびくしてる。
学校でいじめみたいなのを見てると気分が悪いんだよ。」
グループ全員が黙ってしまった。
その中の女子数人が気持ちを打ち明けると...
いじめてる気はなかったけど、悪いと思っていても言い出すのが怖かったらしい。
みんなと同じにしてないと、不安だった。
自分が頼まれたらやっぱり断れないかもしれないと。
そして結衣に対してみんなが今までの事を謝っている。
「解放されたみたいだし、俺の専属メイドになってくれよ!楽だし。」
「あいつさっきえらそうに言ってたくせに最低!!!!結衣帰ろう!」
仕上げも完了。悪者がいればみんな団結するはずだ。
帰り際に結衣は振り向くと、あっかんべーと舌を出して微笑んでいるが、
その頬をうすくピンクに染めている事にまったく気付かない勇樹であった。
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